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クリアルの概要
2022年に東証グロース市場に上場した業界No.1の不動産クラウドファンディング事業を主軸にしている企業です。
これまで、大口の投資家や法人、機関投資家に限られた不動産投資を、個人向けに門戸を広げるようなサービスを展開しています。
オンラインで手軽にできて、不動産ファンドの小口化により個人投資家が身の丈に合った範囲で不動産投資ができるような価値を提供しています。
個人投資家はめんどくさい不動産の管理もプロにお任せすることができます。
事業内容は以下の3つに分けられます。

①98.8%の高稼働率(2020年5月時点)
②東京都23区の都心物件
③売却もフルサポート
④専門家がワンストップサポート
⑤金利1%台から豊富な提携ローン
また、以下のようなメディア掲載実績もあり、上場もしていますので、個人にとっても信頼できる会社の一つです。
■メディア掲載実績
[WBS]ワールドビジネスサテライト(テレビ東京)(1月29日放送)
Forbes JAPAN(5月25日発売号)
PRESIDENT(6月12日発売号)
直近の売上高構成比は以下のようになっています。

主要KPIとなっている投資家数は順調に推移しています。

決算説明資料
同じく主要KPIのGMVも順調に推移しています。
GMVはGross Merchandise Value(流通取引総額)の略で、ファンド組成のために投資家から調達した資金額になります。

決算説明資料
これらの指標は、クリアルの今後の成長を予測する上でも、投資家が注目すべき指標の一つになります。
ESG不動産領域の取り組み
10億円以下の案件は不動産業界では少額とされ人気のない価格帯ですが、個人投資家にとっては大きな価格になりますので小口化することによって個人投資家から資金を集め、売買されにくい価格帯のアセットを割安で取得することができます。
保育園や老人ホームなど社会に必要ではあるけど、機関投資家の投資対象になりにくく資金が入り込みにくい不動産に対しても、クラウドファンディングなら小口で個人投資家からたくさん資金を集めることができます。
これらは社会に必要な施設になりますので、政府の補助金も厚く、個人投資家にとっては比較的安定したリターンが期待できます。
金利上昇はリスクになるか?
クリアルは基本的に銀行からの借り入れに依存せずに、クラウドファンディングで資金調達をしていますので、金利上昇の影響は限定的です。
影響があるとすれば、売却時に新たなオーナーが物件を購入する際にローンを組むケースが想定されますが、金利上昇の影響を受け、不動産の需要が低迷する可能性があります。
このような金利上昇局面では、不動産価格が下落しますのでクリアルにとってはむしろ絶好の買い場となります。
クリアルのインタビュー動画(馬渕磨理子の株式クラブ)
クリアルのビジネスモデルについては、ここまで紹介した内容も含まれている以下のインタビュー動画が非常に参考になります。
財務情報分析
ここからは財務情報分析を紹介します。
簿記や会計、国際会計基準のIFERSを無料で学びたい場合はCPAラーニングがおすすめです。
貸借対照表(B/S)
以下は、クリアルのバランスシートです。
流動資産が流動負債を上回っているので短期負債の資金ぶりが問題になることはなさそうです。
クリアルではクラウドファンディング関連の勘定科目がB/Sの大きな割合を占めています。
「匿名組合出資預り金」と「クラウドファンディング預り金」が流動負債として計上されています。
これに対応する形で、クラウドファンディング関連の「現金及び預金」、「販売用不動産」が流動資産として計上されています。

有価証券報告書より作成
負債で最も大きな割合を占めている「匿名組合出資預り金」はクラウドファンディングの出資者(匿名組合員)持分相当額が計上されており、債権のように返済義務を負うものではないですが、会計上負債として計上されるものになっています。
そのため、見た目上、自己資本比率が低くなっています。
損益計算書(P/L)
以下は、クリアルの損益計算書です。
フラウドファンディング関連の販売用不動産が流動資産の大半を占めるというB/Sの内容でした。
クリアルでは販売用不動産の期末における正味売却価格が帳簿価格よりも下落している場合は、正味売却価格の評価損を売上原価として処理しています。

有価証券報告書より作成
売上高・営業利益・営業利益率・純利益
売上高・売上総利益は順調に推移しています。
EPS・BPS
株主還元
現状、配当及び自社株買いを積極的に行うフェーズではないようです。
ROA(総資産利益率)とROE(自己資本利益率)
以下は、ROAとROEでクリアルの収益性を折れ線グラフで示しています。
直近のROEは18%となっています。
MINKABUより作成
- ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本
- ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産
財務レバレッジ=総資産/自己資本ですので、ROA(%) = 当期純利益/総資産に財務レバレッジをかけ合わせると、当期純利益/総資産 × 総資産/自己資本= 当期純利益/自己資本 = ROEとなります。
つまりROEはROA × 財務レバレッジということになります。
キャッシュフロー(CF)
以下はキャッシュフロー計算書を元にクリアルのキャッシュの推移を示しています。
2021年は事業拡大のために販売用不動産を取得したので、営業CFはマイナスになっています。
2022年は投資CFがプラスになっていますが、主に貸付金回収によるものです。
CFの推移をCFマトリクスで確認することで企業の成熟段階を分析することができます。

- 投資期→安定期→停滞期→低迷期→後退期→破綻期と円を描くような矢印が示されていますが、これは企業の一般的なライフサイクルを示しています。
- 横軸に営業CF、縦軸に投資CFをとっています。
- 営業CFがマイナスの場合、ビジネスをすることで損失を出している状態で、プラスの場合はビジネスでキャッシュを得ている状態を指します。
- 投資CFがマイナスの場合、事業投資をしている状態で、プラスの場合は資産を売却してキャッシュを得ている状態を指します。
- 点線が営業CF=投資CFのラインになります。
- CFマトリクス上で点線よりも上に位置している場合、企業のキャッシュは増えていることを示します。
安定期の場合
事業投資も行っているが、ビジネスで儲けた金額の方が大きいことによってキャッシュが増えています。
停滞期の場合
ビジネスでの儲けに加え、資産を売却することでキャッシュが増えています。
低迷期の場合
ビジネスの儲けは損失が出ている状態です。しかし、資産の売却額が本業の損失額よりも大きいため、キャッシュは増えている状態です。