世界で最も売れているAbbVieの超大型薬Humira

世界で最も売れてるHumiraはAbbVieの稼ぎ頭

今回は世界で最も売れている医薬品でTNF阻害剤のHumira(AbbVie)について解説していきます。

2019年のHumiraの世界売上高は191億6900万ドル(2019 Form 10-K)でした。
これは日本円に換算すると1ドル109円として年間2兆894億円にもなります。
Humiraの全世界売上だけで2019年のAbbVieの売上高の60%近くを稼いでいることになります。
したがって、超大型薬のHumiraを知ることはAbbVieの将来を予測することにもなりますので今回取り上げました。

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Humiraは幅広い患者さんに使われている

Humira は2003年1月に世界で最初に発売され、現在は世界で以下の患者さんに使用されています。
ただし、日本では膿疱性乾癬の適応があるが海外では無いなど、適応のとり方が国によって若干異なるケースがあります。

若年性特発性関節炎(JIA)
関節リウマチ
強直性脊椎炎
ブドウ膜炎
クローン病
潰瘍性大腸炎
乾癬性関節炎
尋常性乾癬
膿疱性乾癬
ベーチェット病
化膿性汗腺
壊疽性膿皮症炎

Humiraが超大型化した理由として、発売から長い歴史の中で有効性と安全性のエビデンスが蓄積・確立されていることに加え、上記の様に一つの成分で幅広い疾患の患者さんに使われていることも関係していると思われます。

そのため、米国ではHumiraのフォーミュラリー(医薬品リスト)のカバー率が高く、同じような対象の患者さんに使用される他の生物製剤と比較して保険償還がされやすい(=多くの患者さんに使われやすい)という一面があります。

これらの要素は結果的に相乗効果があり、幅広い患者さんに使われれば、その分有効性・安全性のデータが蓄積されていきますので、Humiraの臨床的な信頼感を高めることにもつながります。

また、適応疾患は主に自己免疫疾患ですので、開発・販売戦略上の領域シナジーもあると思われます。

2023年にバイオシミラーが参入

そんなHumiraですが圧倒的に大きな市場の米国では2023年にバイオシミラーが発売される予定です。
欧州では既に2018年にバイオシミラーを発売することができます。

米国市場がどれくらいHumiraにとって重要かというと、2019年のHumiraの売り上げのうち80%近くが米国で売り上げたものになります(2019 Form 10-K)。

そのため、ここからは主に米国市場に焦点を当てて解説をしていきます。

AbbVieとしては2023年以降、Humiraのバイオシミラーによる米国市場の侵食を如何に抑えられるかが重要になってきます。

バイオシミラーの市場侵食対策

AbbVieは同じ自己免疫疾患領域でJAK阻害剤であるRinvoq(upadacitinib)とIL-23阻害剤であるSkyrizi(risankizumab)を投入し・注力することで、会社としてはHumiraが抑えていた市場を新製品で維持しようとすると思われます。

Rinvoqは同じくJAK阻害剤で先に上市しているXeljanzと同様に、メトトレキサートに対に対して効果不十分な中等度から重度の関節リウマチ治療薬として承認されています。
メトトレキサートは関節リウマチの治療フローで最初に使われるアンカードラッグです。

RinvoqのアピールポイントとしてはHumiraや新しく市場に投入されたSkyriziなどの生物製剤と異なり、経口服用できる利便性が挙げられます。

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市場侵食対策の懸念点

Humiraのバイオシミラーによる市場侵食の対策にもいくつかの懸念点があります。
ここでは3つ挙げますが、①と②は何れも新たに投入しているRinvoqが同じJAK阻害剤のクラスに属するXeljanzの影響を受けてしまうというものです。

Rinvoqの市場拡大が限定的になるリスク

1つ目が同じJAK阻害剤のXeljanzの後発品が2026年頃に発売見込みですので、JAK阻害剤を必要とする患者さんは安価な後発品に流れてしまい、Rinvoqの市場拡大は限定的になってしまうのではないかという見方があります。

JAK阻害剤の市場拡大が限定的になるリスク

2つ目が同じJAK阻害剤のXeljanzについて最近完了した市販後調査(NCT02092467)にて主要評価項目(主要な心血管系有害事象(MACE)および悪性腫瘍(非黒色腫皮膚がんを除く)に関して、TNF阻害薬と比較して非劣性である)を達成することができませんでした。
言い換えるとXeljanzの方がTNF阻害薬と比較してハザード比が高かったという結果になりました。

このニュースを受けて、同日のファイザーの株価は前日の引けより2.8%下落しました。

AbbVieはこの結果についてRinvoqはXeljanzと差別化されており、その影響は限定的と見ていますが、同じJAK阻害剤のクラス効果という見方も強く、RinvoqがXeljanz見られたような安全性上のリスクが無いということを証明する必要がありそうです。

また、結果を受けて引き続きHumiraなどのTNF阻害薬が使われ続けるという見方が強いですし、TNF阻害薬が使われ続けるということはAbbVieがHumiraのバイオシミラーの侵食による影響を多く受けるということになります。

以上を踏まえると、Humiraのバイオシミラーによる市場の侵食の対策として投入するRinvoqは、期待していたほど市場を拡大できないリスクと、Xeljanzの市販後調査結果からJAK阻害剤自体の市場拡大が制限される(同じ薬剤クラスとして共倒れする)リスクが付きまといます。

③SkyriziがHumira市場(適応)をどれだけカバーできるか

Skyriziも現状、米国では尋常性乾癬のみの適応であることから幅広い適応を有するHumiraが持っていた市場をカバーするには至っておらず、今後の開発で如何に適応を広げられるかがキーになってきます。

この点に関しては現状、関節リウマチしか適応を有していないRinvoqにも言えることですね。

適応取得状況はブログ執筆時点のもので、現在、適応拡大のために臨床試験を実施しているものもありますので、将来この記事を読まれるタイミングによっては状況が変わっている可能性があることご容赦ください。

現状米国ではバイオシミラーの侵食は限定的

ポジティブな要素としては米国では他国と比較して、現状バイオシミラーの浸透が限定的な市場環境にあります。

既に記載した以外の対策でも米国の医薬品市場においては、先発品の価格を下げたり保険のPayerに対してより高いリベートを企業が提供することで、バイオシミラーの侵食を軽減する対策がとられるのが一般的です。

これに加えて、米国では他国と比較してバイオシミラーの互換性に関する規制が厳格であり、承認取得のためには先発バイオ医薬品からバイオシミラーへ切り替えてもその薬剤の有効性と安全性が同等であることを証明する切りかえ試験を実施することが必要とされています※。
これらの試験は通常少なくともバイオシミラーから先発品への切り替え、先発品からバイオシミラーに切り替える2つ以上の試験を実施しなければなりません。
そのため,後発品メーカーも一般的なジェネリック医薬品よりも遥かに大きな開発投資が必要とされていることから、バイオシミラーに関しては他国よりも参入障壁があり、このような現状はAbbVieのような先発バイオを出しているメーカーにとってポジティブな要素になります。

ただし、米国では他剤を見てもまだ市場に参入しているバイオシミラーが限られているということもありますし、米国以外ではバイオシミラーへの切替えが積極的に行われている現状を踏まえると、今後米国市場でバイオシミラーがどれくらい浸透していくのかは引き続き注視する必要がありそうです。

これはAbbVieに限らず米国展開している他の製薬企業に投資をする際も注視しておくべき要素です。

今回の内容が参考になれば幸いです。

※Biosimilar Regulatory Policy:Understanding the Landscape and Relevance to Medical Practice(FDA)

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