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スリーエム (MMM )について
MMMは化学・電気素材を核とした多角経営を行っています。
粘着製品のポストイットなどの一般消費財が私達には馴染みがあるかもしれません。
以下は moomoo証券
3M Companyでは事業セグメントを安全・工業用品(保護めがねや防音保護具など作業員の安全を守るものから、研磨剤、接着剤やテープなどの工業用製品まで)、輸送・電子(自動車製造関連製品、電子機器用材料、電気・電子部品など)、ヘルスケア(創傷ケア、口腔ケア、ヘルスケア IT 、食品衛生関連製品など)、一般消費財(文房具やオフィス・事務用品、DIY向け製品など)の4つに分けています。
3Mは多角経営を行っていますが、2023年末までにヘルケア事業をスピンオフ(分離)する予定になっています。
ヘルスケア事業の占める割合は約25%となっています。
3Mはパーフルオロキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)製造で世界最大級の企業です。
PFASは医療技術、半導体、バッテリー、電話、自動車、飛行機など、多くの製品の製造に不可欠ですが、分解速度が遅く、飲料水や土壌や食品への深刻な蓄積が近年確認されています。
3MはPFASの被害を巡る訴訟圧力を受けており、PFASの製造期限を2025年に設定しています。
株価
MMMの現在の株価は以下のようになっています。
財務情報分析
ここからは財務情報分析を紹介します。
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貸借対照表(B/S)
以下は、MMMのバランスシートです。
流動資産が流動負債を上回っているので短期負債の資金ぶりが問題になることはなさそうです。
MMMは株主から集めたお金を使ってしっかりと利益があげられています。

2022年 Annual Reportより作成
損益計算書(P/L)
以下は、MMMの損益計算書です。

事業分離益が発生していますが、食品安全事業を分離し、米ミシガン州のNeogen社と事業統合したことに伴う利益になります。
プレスリリース
https://info.neogen.com/3m-press-release
売上高に占める原価率は56%、販管費は26%、研究開発費は5%となっており、営業利益率は19%と高い収益性を誇っています。
売上高・営業利益・営業利益率・純利益
営業利益率は20%を上回る年がほとんどででしたがここ2年は営業利益率が低下しています。
株主還元
以下は、MMMのフリーキャッシュフローの推移を折れ線グラフで示しており、配当と自社株買いを積上げ縦棒グラフで示しています。
変動幅が大きい当期純利益では還元状況がつかみにくいため、企業によっては分母を純資産としたDOE(株主資本配当率)を還元目標としている場合もあります。
そこで、純資産と配当金の推移もまとめています。
年によっては本業で得た資金から設備投資などの支出を差し引いた自由に使えるお金(フリーキャッシュフロー)以上の自社株買いと配当を行っていることもあり、株主還元に積極的であることが分かります。
Annual Report(Cash Flows from Financing Activities:のDividends paid to stockholders, Purchases of treasury stock)より作成
MMMは50年以上連続増配を更新中の配当王かつ配当貴族銘柄でもあります。
配当王・配当貴族銘柄については以下の記事を参考にしてください。

連続増配株ですので配当による株主還元を重視しつつ、業績に応じて自社株買いをするものと思われます。
ROA(総資産利益率)ROE(自己資本利益率)ROIC(投下資本利益率)
以下は、ROA、ROE、ROICでMMMの収益性を折れ線グラフで示しています。
Morningstar(Operating Performance)より作成
- ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本
- ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産
- ROIC(%)= 税引後営業利益 ÷ 投下資本(有利子負債 + 株主資本)
一般的に、自社株買いを積極的に行っている企業の場合、純資産が減り自己資本比率が低下するのでROEが高くなります。
また、配当による株主還元を積極的に行っている企業は現金(内部留保)を減らすことになり、財務レバレッジが向上するので、ROEが高くなります。
財務レバレッジ=総資産/自己資本ですので、ROA(%) = 当期純利益/総資産に財務レバレッジをかけ合わせると、当期純利益/総資産 × 総資産/自己資本= 当期純利益/自己資本 = ROEとなります。
つまりROEはROA × 財務レバレッジということになります。
米国企業はROEは12%、ROAは6%程度と言われています。
MMMのROAを見ると表示期間では13%程度と安定して推移しています。
MMMの収益性は高いと言えます。
ROICは投下資本からどれだけ税引後営業利益を生み出したかを見ています。
ROICは、営業利益から法人税を差し引く税引後営業利益(NOPAT)を使うことで、債権者と株主に帰属する利益をどれだけ効率よく生み出しているかを見ることができます。
債権者に対して支払う負債コストは主に金利です。
株主資本コストは、配当やキャピタルゲインの期待要求利回りです。
政策金利が上がると有利子負債のコストが高くなります。
債権の金利が高くなると、株式の投資妙味を確保するために株主が企業に対して求める投資リターンの水準も高くなります。
この負債コストと株主資本コストを加重平均した資金調達コストがWACCで、企業はWACC以上の利回り、すなわちROICを目指す必要があります。

米国企業のROICは10%程度が平均で、日本企業は6%程度になりますので、かなり投資効率の良いです。
尚、ROICは株主と債権者両方の視点が入っていますが、先程のROEは当期純利益を純資産(自己資本)で割ったもので、株主視点の指標であると言えます。
一方、ROAは当期純利益を総資産で割ったものですので、全社的視点の指標であると言えます。

EPS・DPS・配当性向
EPSは上昇傾向でありますが、配当性向も高くなってきております。
キャッシュフロー(CF)
以下はMMMのキャッシュの推移を表しています。
FCF(営業CF-投資CF)は毎年プラスであることがわかります。
キャッシュフロー計算書を元に2016年~2021年の6年間の営業CFと投資CFデータからCFマトリクスを作成しました。
CFの推移をCFマトリクスで確認することで企業の成熟段階を分析することができます。
以下がその結果です。

CFマトリクスの見方
- 投資期→安定期→停滞期→低迷期→後退期→破綻期と円を描くような矢印が示されていますが、これは企業の一般的なライフサイクルを示しています。
- 横軸に営業CF、縦軸に投資CFをとっています。
- 営業CFがマイナスの場合、ビジネスをすることで損失を出している状態で、プラスの場合はビジネスでキャッシュを得ている状態を指します。
- 投資CFがマイナスの場合、事業投資をしている状態で、プラスの場合は資産を売却してキャッシュを得ている状態を指します。
- 点線が営業CF=投資CFのラインになります。
- CFマトリクス上で点線よりも上に位置している場合、企業のキャッシュは増えていることを示します。
安定期の場合
事業投資も行っているが、ビジネスで儲けた金額の方が大きいことによってキャッシュが増えています。
停滞期の場合
ビジネスでの儲けに加え、資産を売却することでキャッシュが増えています。
低迷期の場合
ビジネスの儲けは損失が出ている状態です。しかし、資産の売却額が本業の損失額よりも大きいため、キャッシュは増えている状態です。
MMMの場合、分析期間の6年はビジネスでの儲けにより、毎年CFを着実に増やしていることが分かります。
MMMは連続増配株ですが、今後の増配も期待でき、長期保有をする上でも安心感があるではないかと思います。