目次
ヴァンエック・アグリビジネスETF(MOO)に投資をする理由
今回はヴァンエック・アグリビジネスETF(MOO)について、他の農業関連ETFとも比較しながらその特徴について見ていきます。
農業関連ETFに投資をする理由としてはどのようなものが挙げられるでしょうか。
筆者の場合は、以下のような仮説が投資をする動機になっています。
- 世界人口の増加に伴う、食料需要の増加
- 気候変動に伴う、農作物の供給不足
- 新興国の生活水準向上に伴う飼料の需要増
- バイオエタノールなどの代替エネルギー資源としての需要増
- 戦争や分断に伴う、商品価格の値上がり
- インフレヘッジ

穀倉地帯の干ばつや年々深刻化している異常気象が農作物の収穫量を減らし、価格高騰の要因になります。
またそれだけではなく、原油、天然ガスの価格高騰の影響も受けます。
世界的なトレンドとしては脱炭素や環境対策の動きがあります。
石油会社は環境意識が高い株主の目もあり、温室効果ガスの排出量が多い原油や天然ガスの生産を抑えるこに繋がります。
奇しくも原油、天然ガスの生産減少が電力、ガス料金の上昇につながります。
例えば、農作物の生育に欠かせない窒素、リン酸などの化学肥料の製造では電力、ガスを大量に使うことが知られており、農作物の生産コスト増につながります。
MOO vs DBA vs VEGIの比較
以下でMOOとしばしば比較されるDBAとの違いを見ていきましょう。
MOOとDBAの一番大きな違いは、株式に投資するのか商品に投資をするのかの違いではないでしょうか。
DBAは商品に投資をしますので、分配金も出ません。
おそらく日本の証券会社で投資ができる米国籍ETFがこの2つなのでしばしば比較されるのだと思います。
MOOと比較するならiシェアーズMSCIグローバル・アグリカルチャー・プロデューサーズETF(VEGI)と比較する方が妥当かもしれません。
しかし、残念ながらVEGIは日本の証券会社からは買うことができません。
経費率は一番低く、分散も効いており、ティッカーコードもベジタブルのベジ(VEGI)で覚えやすいですが残念です。
Ticker | MOO | DBA | VEGI |
---|---|---|---|
名称 | ヴァンエック・アグリビジネスETF | インベスコ DB A ETF | iシェアーズMSCIグローバル・アグリカルチャー・プロデューサーズETF |
連動指数 | MVIS グローバル アグリビジネス インデックス (MVMOOTR) | DBIQ ダイバーシファイド・アグリカルチャー・インデックス・エクセス・リターン | MSCI ACWI セレクト アグリカルチャー プロデューサーズ インベスタブル マーケット インデックス |
重み付け | 時価総額 | 商品価格に応じた基準配分率でリバランス | 時価総額 |
基準価額 (米ドル) | 73.85 (2023/12/7) | 21.68 (2023/12/7) | 36.57 (2023/12/6) |
投資対象 | 株式 肥料・農薬、 種子、 農場/灌漑機器及び農機、 農産物(穀物、タバコ、肉、鶏肉、砂糖を含む)、 水産物の養殖及び漁業、 家畜、 植林、 農産物の貿易から 収益の50%以上を生み出す企業 投資可能対象の90%以上をカバー | 商品(農産物) トウモロコシ 大豆 砂糖 生牛 ココア コーヒー 豚赤身肉 小麦 カンザス小麦 素畜牛 綿 | 以下のGICSに基づいて分類されたコモディティ生産企業。 ただし農業の一次生産に直接関与しない企業は除外 肥料・農薬 建設機械・大型トラック 農業機械 農産物 包装食品・肉 |
地域 | グローバル | グローバル | |
リバランス | 年4回 組入銘柄は8%が上限 | 年1回(11月) | 年4回(2月、5月, 8月、11月) |
純資産総額 (米ドル) | 9.2億 (2023/12/7) | 7.96億 (2023/12/6) | 1.60億 (2023/12/7) |
設定日 | 2007/08/31 | 2007/01/03 | 2012/01/31 |
分配利回り | 2.54% | 0.00 % | 2.04% |
経費率 | 0.53% | 0.93% | 0.39% |
構成銘柄数 | 60 (2023/12/6) | 153 (2023/12/6) |
MOOは修正時価総額加重平均で浮動株を調整しています。
世界のアグリビジネスに従事する上場株式の全体的なパフォーマンスに連動するよう設計されています。
MOOは売上高のアグリビジネスに占める割合が50%以上の企業を対象にしています。
MOOとDBAとVEGIの値動き比較
以下のチャートを見てください。
赤がMOO、黄がDBA、青がVEGIを示しており、3つのETFの中で一番新しいVEGIの設定来の値動きを比較しています。
MOOとVEGIは株式に投資をして、DBAは商品に投資をするという大きな違いがあり、値動きもMOOとVEGIは比較的似ており、DBAとは大きな違いがあることがわかります。

そのため、以降はMOOとVEGIで被る要素が上のような値動きに大きく影響しているのではないかという仮説の元、2つのETFの特徴を見ていきます。
VEGIは日本の証券会社からは買うことができませんが、その特徴を知ることでMOOの理解を深めることができます。
MOOとVEGIの構成銘柄重複
以下はMOOとVEGIの構成銘柄の重複を見たものになります。
「Overlap Companyが占める構成比率合計」を見ると、MOOとVEGIで重複している銘柄が、MOOの50%以上を占めていることが分かります。
VEGIは農業機械、建設機械のメーカーのディア・アンド・カンパニー(Deere & Company)の比重がかなり大きくなっています。
MOOも時価総額加重平均で銘柄を組み入れていますが、リバランス時に組入銘柄は8%のキャップが設けられていますのでVEGIと比較して1つの銘柄に大きく偏ることはありません。
穀物メジャー組入比率
小麦や大豆、トウモロコシなどの主要穀物の買い付けから集荷、輸送、保管までを手がける専門の大手商社を「穀物メジャー」といいます。米国や欧州に本社を置く上位5社程度で世界の穀物取引の約8割を占めると見られ、世界の穀物流通に大きな影響力を持っています。
nikkei4946.com
経営規模では首位のカーギル(アメリカ)、2位のアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)(アメリカ)が群を抜いています。
ADM、ブンゲ(オランダ)、カーギル、ルイ・ドレフュス(フランス)の「ABCD」4社が4大穀物メジャーと言われています。
カーギルとルイ・ドレフュスは非上場でMOOにはADM、ブンゲが含まれており、合わせて10%以内の比率になっています。
MOOには1銘柄あたり8%のキャップがありますので、最大でも16%以内になることが想定されます。
セクター比較
以下がセクター比較です。
MOOとVEGIの大きな違いはヘルスケアセクターを含んでいるかいないかです。
MOOはペットや家畜のヘルスケア関連銘柄も投資対象としていますのでヘルケアセクターが含まれています。
MOOの方が銘柄数は少ないですが、セクターは分散がされています。
地域比較
以下が地域比較です。
アメリカが最も大きな割合を占めており、先進国中心にグローバルで構成されています。
新興国の需要の増加を取り込める先進国企業を中心に投資ができるのがこのETFのメリットと考えます。
MOO | VEGI | |
---|---|---|
アメリカ | 52.99 | 61.60 |
ドイツ | 6.04 | |
カナダ | 6.17 | 6.22 |
日本 | 5.25 | 4.38 |
中国 | 4.57 | 2.30 |
ノルウェー | 4.38 | 4.63 |
イギリス | 3.76 | |
その他・現金 | 0.01 | 8.21 |
ブラジル | 3.49 | |
マレーシア | 2.79 | 1.93 |
オーストラリア | 2.68 | |
チリ | 1.71 | |
シンガポール | 0.86 | 1.50 |
イスラエル | 0.93 | 1.05 |
スイス | 0.94 | |
タイ | 0.83 | |
フェロー諸島 | 0.77 | |
オランダ | 0.62 | |
台湾 | 0.54 | |
インドネシア | 0.32 | |
デンマーク | 0.35 | |
香港 | 1.12 | |
スウェーデン | ||
インド | 4.90 | |
イタリア | 0.00 | |
サウジアラビア | 2.96 |
今回の内容が参考になれば幸いです。