目次
銘柄を分散しつつ増配の恩恵を受けられるETF
今回は米国の連続増配系ETF:VIG vs SDYについてどちらがおすすめなのか解説します。
これらのETFに興味を持ったあなたは、分配金という安定したキャッシュフローを得ることを重視しているのかもしれません。
分配金目的でしたら、米国高配当ETF(VYM、HDV、SPYD)をまず検討する方も多いでしょう。
さらに米国には25年以上増配を続ける配当貴族銘柄や50年以上増配をし続ける配当王銘柄も多く存在します。
当ブログでは、配当王・配当貴族銘柄の情報を定期的にまとめていますので興味のある方は参考にしてください。

25年以上や50年以上増配し続けている企業群というのは、安定して配当を出し続ける財務の健全性と持続性があるビジネスモデルや高い参入障壁・ブランド力を築いているケースがあり、投資対象としても魅力的です。
連続増配ETFは、配当金(分配金)というインカムゲインを毎年安定的に増やしてくれることが期待でき、さらにそれを銘柄を分散しながら実現することができます。
米国の連続増配ETF:VIG vs SDYの概要比較
以下が米国の連続増配ETF:VIG vs SDYの概要を比較した結果になります。
VIGは10年以上、SDYは25年以上連続増配している銘柄が投資対象です。
VIGは高配当株とは言えない利回りで、SDYの分配利回りも米国高配当ETF(VYM、HDV、SPYD)と比較すると低くなっています。
Ticker | VIG | SDY |
---|---|---|
名称 | バンガード 米国増配株式ETF | SPDR S&P 米国高配当株式 ETF |
基準価額 (米ドル) | 164.59 (2023/12/06) | 120.86 (2023/12/06) |
投資対象 | 10年以上の連続増配米国株 | 配当利回りが最も高い60の S&P Composite 1500 Index銘柄 25年以上の連続増配企業 |
ウェイト付け | 時価総額加重平均 | 予想配当利回りに基づいて |
純資産総額 (百万米ドル) | 71,083.19 (2023/11/30) | 20,108.97 (2023/11/30) |
設定日 | 2006/04/21 | 2005/11/08 |
分配利回り | 1.92 % | 2.66 % |
経費率 | 0.06% | 0.36 % |
構成銘柄数 | 314 (2023/10/31) | 121 (2023/12/06) |
値動き比較
以下のチャートを見てください。
赤がVIG、青がSDYを示しており、VIGの設定来の値動きを比較しています。
分配利回りが低いVIGの方が、値上がりしていることがわかります。

VIGとSDYの構成銘柄重複
以下はVIGとSDYの構成銘柄の重複を見たものになります。
表の一番下の行の「Overlap Companyが占める構成比率合計」を見ると、VIGとSDYの重複銘柄は、SDYの6割以上を占めていることが分かります。
VIGの方が広く分散されており、VIGに投資をすればSDYのウェイトの6割以上に投資ができることを示しています。
以下の表はスクロールすることができます。
配当貴族銘柄(25年以上増配)を多く含むのはどっち?
上の表では長期連続増配実績がある配当貴族銘柄がそれぞれのETFの構成比率に占める割合を比較しています。
日本の証券会社では取り扱いが無いですが、S&P500配当貴族銘柄に投資をするNOBLというETFが存在します。
S&P500配当貴族ETF(NOBL) S&P 500から、少なくとも25年連続で配当を増やした企業のみを選択する。抽出された銘柄に均等配分する構成になっている。配当貴族指数では株価の変動に対しては年4回構成比率の見直しが行われ、指数構成銘柄については前年の配当実績をもとに毎年1月に見直される。 |
今回、配当貴族ETFであるNOBLとの重複銘柄がVIGとSDYそれぞれに占める割合を算出しました。
配当貴族ETFであるNOBLとSDYの重複銘柄を見ればSDYには配当貴族銘柄が全てと言っていいほど含まれており、SDYとNOBLの重複銘柄は、SDYの50%以上のウェイトを占めていることがわかります。
SDYとNOBLは重複も大きいため同じような値動きになることが想定されますが、以下のように乖離があります。
SDYはNOBLにアンダーパフォームしています。

これはSDYとNOBLのウェイトのかけ方の違いが原因の一つと考えられます。
SDYは予想配当利回りに基づいた構成比率になっています。
一方、NOBLが連動を目指す配当貴族指数では基本的に抽出された銘柄に均等配分する構成になっています。
高配当を重視するとキャピタルゲインがどうしても抑えられてしまうのでしょう。
SDYは25年以上連続増配している銘柄を対象にしていますが、予想配当利回りに基づいた構成比率になっていますし、ファンド名の通りあくまでも高配当ETFの側面があると考えたほうが良いでしょう。
S&P高配当貴族指数とS&P配当貴族指数は異なるもの
SDYと配当貴族指数(NOBL)の値動きに差が生まれるもう一つの原因として、SDYはS&P500銘柄以外の連続増配している高配当銘柄も含んでいる点が考えられます。
SDYはS&P高配当貴族指数に連動するETFで、 S&P500 配当貴族指数と名前が似ていますが異なる指数になります。
S&P高配当貴族指数が縛られるのは、 S&P500構成銘柄ではなくS&Pコンポジット1500指数です。
S&P高配当貴族指数
S&P高配当貴族指数は、S&Pコンポジット1500指数の構成銘柄のうち、20年以上連続して増配方針に従っている企業のパフォーマンスを測定するよう設計されている。
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
S&P 500配当貴族指数
S&P 500配当貴族指数は、S&P 500構成銘柄のうち、過去25年間連続して毎年増配している優良大型株のパフォーマンスを測定している。
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
分配金の成長比較
暦年(Calendar Year;CY)の合計分配金の推移と四半期の分配金の推移をまとめると以下のようになります。
バンガード 米国増配株式ETF(VIG)
連続増配年数 | 9年 |
5年分配金CAGR | 9.90% |

SPDR S&P 米国高配当株式 ETF(SDY)
連続増配年数 | 0年 |
5年分配金CAGR | 6.96% |

VIGは9年連続増配していますが、SDYは直近2022年に減配しました。
他のETFと比較するためにSDYとVIGに加え、S&P500に連動するSPY、高配当ETFのVYMについて、2007年のCYの合計分配金を100%とした時の暦年(Calendar Year;CY)の合計分配金の推移をまとめると以下のようになります。
VYMのCY合計分配金が確認できるのが2007年以降になりますのでこの期間の分配金の水準を比較します。
直近15年の分配金の成長率はVIG>VYM>SPY>SDYという順番でした。

リーマンショックがあった2008年から2009年にかけてはさすがに何れのETFも減配していることが分かります。
その中でもVIGの減配は比較的抑えられていることがわかります。
ちなみに、各ETFの分配金推移は以下のリンクを参考にしてください。
Ticker | ETF |
---|---|
SDY | SPDR S&P 米国高配当株式 ETF |
SPY | SPDR S&P 500 ETF トラスト |
VIG | バンガード 米国増配株式ETF |
VYM | バンガード 米国高配当株式ETF |
【まとめ】米国の連続増配ETF:VIG vs SDYのどちらがおすすめか
米国の連続増配系ETF:VIG vs SDYについて、以上をまとめると以下のようになります。
SDYは増配力の強いETFで、配当貴族銘柄を広く網羅している魅力的な点があります。
さらに、連続増配年数の基準もVIGよりも厳しくなっています。
一方、構成銘柄のウェイトのかけ方が予想配当利回りに基づいているという少しクセのある点と、経費率が若干高い点が筆者としては気になります。
また、高配当系ETF(VYM、HDV、SPYD)と比較すると配当利回りが低い一方で、VIGと比較すると大きな値上がりが期待できず、VYMと同程度の値上がり率となっています(以下の記事参照)。

これらが気にならない方はSDYも有力な選択肢となります。
連続増配系ETF:VIG vs SDYを比較したときに、万人におすすめできるのはVIGと筆者は考えています。
選択基準 | VIG | SDY |
---|---|---|
単価が安い | ◯ | |
純資産総額 | ◯ | |
設定から歴史が長い | 僅かに◯ | |
値上がり重視 | ◯ | |
分配利回り | ◯ | |
分配金の成長 | ◯ | |
連続増配 | ◯ | |
配当貴族 銘柄数が多い | ◯ (100%) | |
配当貴族 銘柄のウェイトが高い | ◯ (50%以上) | |
低い経費率 | ◯ | |
分散 (構成銘柄数が多い) | ◯ | |
ウェイト付け | 時価総額加重平均 | 予想配当利回りに基づいて |
何れも将来受け取れる分配金が成長し続けることが期待できる分散された投資先になるという点では共通です。
今回の内容が参考になれば幸いです。
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