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本を手に取ったきっかけ・目的
日本は欧米に追いつけ追い越せで先進国の仲間入りを果たしました。
高度経済成長期の日本は欧米の先進国を目標にすれば良かったので常に「答えがあった世界」にいましたが、成熟国になった日本の現在は「答えのない世界」に突入しています。
本書はこれからの時代、どうやって生き抜いていくのかを考えるために手に取った本です。
今回はダニエル・ピンクさんの著書「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」を紹介します。
- ビジネスマン
- キャリアを考えている人
- 他人と差をつけたい人
- イノベーション人材になりたい人
人生に取り入れたい文脈
本も読むだけではなくて、行動に移さなければ意味がありません。
ここからは個人的に、人生に取り入れようと感じた、文脈や文意をいくつか紹介していきます。
この時代を生き抜くための3つの問い
この時代を生き抜くためには、一人ひとりが自分の仕事を注意深く見つめ、次のことを問う必要があると本書では述べられています。
- 他の国なら、これをもっと安くやれるだろうか
- コンピュータなら、これをもっとうまく、早くやれるだろうか
- 自分が提供しているものは、この豊かな時代の中でも需要があるだろうか
これらは成功者と脱落者とを分ける指標です。
1.他の国なら、これをもっと安くやれるだろうか
ホワイトカラーが従事する左脳型のルーチンワーク*の大部分が、今では新興国の国々で驚くほど安いコストで行なわれています。
*左脳型のルーチンワーク・・・財務分析、放射線医学、コンピュータ・プログラミングなど
そのため、先進国のナレッジ・ワーカー**たちは海外に委託できないような新たな能力を身につける必要に迫られています。
**ナレッジ・ワーカー・・・経営学者のピーター・ドラッカーは弁護士、医者、会計士、エンジニア、会社経営者などをナレッジ・ワーカーと名付けた。体力や手先の器用さではなく、学校で学んだ知識を活かして報酬を得ている人々。理論的、分析的知識を吸収し、それを適用していく能力がある「左脳手動思考」に秀でている人々。
2.コンピュータなら、これをもっとうまく、早くやれるだろうか
オートメーションにより、ひと昔前のブルーカラー労働者がロボットに職を奪われたのと同じような影響を、現代のホワイトカラー労働者も受け始めました。
左脳型の職業につく人たちは、コンピュータが安く、迅速に、上手にこなすことができないような能力を新たに身につけなくては淘汰されることになります。
これは、ホワイトカラーの私の身の回りにも起こっています。
会社にPower Automateが導入されてから、繰り返し行う作業は自動化していますし、TableauなどのBIツールを導入してから、時間がかかっていたビジュアル化が大幅に短縮されました。
翻訳や文書作成もAIの方が効率的で早くやってくれます。
3.自分が提供しているものは、この豊かな時代の中でも需要があるだろうか
豊かさのおかげで、多くの人の物質的ニーズは過剰なまでに満たされました。
それによって美しさや感情面を重視する傾向が強まり、物事の意味への追求に拍車がかかりました。
海外のコストの安い労働者にはこなせず、コンピュータが人よりも速く処理できないような仕事に集中し、繁栄の時代の美的・情緒的・精神的要求に応えられる個人や組織が成功することにります。
この三つの問いを無視する人は苦しむことになるだろうと本書では述べられています。
個別よりも「全体の調和」
「産業の時代」と「情報化時代」の大半を通じて、何かに焦点を絞ったり、特化したりすることが重視されてきました。
しかし、ホワイトカラーの仕事がアジアへ流出し、ソフトウェアに取って代わられるようになるにつれ、その対極にある資質に新たな価値が見出されるようになったと述べられています。
それはバラバラなものをひとまとめにする能力で、著者が「調和」と呼んでいるものです。
今日、最も重視されるのは、分析力ではなく総括力、つまり全体像を描き、バラバラなものをつなぎ合わせて印象的で新しい全体観を築き上げる能力です。
日本人や日本企業の仕事は、各個人の職務定義が曖昧で、他人や他部署とのRole & Responsibilityも曖昧になりがちです。
一方で、外資系の企業は職務定義が明確で、他人や他部署とのRole & Responsibilityもはっきりしています。
これは私の解釈が間違っている可能性も大いにありますが、日本人の曖昧な部分の良さが、今後見直される可能性もあるなと想像しました。
職務定義が明確に決まっており、その範疇を超えたボールは拾いに行かない働き方よりも、「境界」を自分で超えていけるような働き方の方が、全体調和には良いと感じました。
細分化された、定義ができる職業は、それこそ、業務委託でも良いのではないかと感じました。
言葉では表しにくい特性で勝負をする
「価格と品質」という必要条件をいったんクリアしたら、機能面や価格面での勝負ではなく、言葉では表しにくい特性、たとえば、斬新さや美しさと、フィーリングなどで他社製品と争うことになります。
現在、ビジネスでは手ごろな価格で十分な機能が備わった製品を製造するだけでは、もはや不十分と言えます。
これは山口 周さんの著書「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 」では「アカウンタビリティ」と表現されていました。
「アカウンタビリティ」とは言語化できるかどうかになります。
アカウンタビリティがあるということは、再現性があり、コピーできてしまいます。
一方、ストーリー性などは、コピーされてもオリジナルの価値が揺るがない最後の価値になります。
例としてアップルという会社の持つ本質的な強みは、ブランドに付随するストーリーと世界観です。
これらは決してコピーすることはできず、アップルでないといけないのです。
ひとつの事実の価値は低くなってしまう
事実というのは、誰にでも瞬時にアクセスできるようになると、一つひとつの事実の価値は低くなってしまうものなのです。
これも山口 周さんの著書「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 」では同じようなことが述べられていました。
今日、多くのビジネスパーソンは、論理的な思考力、理性的な判断力を高めるために努力していますが、そのような努力の行き着く先は「他の人と同じ答えが出せる」という終着駅になります。
正解はコモディティ化しており、終着駅はレッドオーシャンです。
他人と同じ正解を出すということなので、必然的に「差別化の消失」という問題を招くことになります。
そこで、それらの事実を「文脈」に取り入れ、「感情的インパクト」を相手に伝える能力が、ますます重要になってきます。
まとめ
本書の中で「世界第二の経済大国・日本」という表現があったので、発売日を見たところ2006/5/8の書籍でした。
ただ、当時、書籍で記載されていた未来の姿は、現在、驚くほどその姿になっています。
つい最近出版された書籍なんじゃないかと思ったほど、内容に古さを感じず、現代に生きる私であっても学ぶ事が多い書籍でした。