君はどう生きるか|鴻上 尚史 著

本を手に取ったきっかけ・目的

本書は著者の鴻上 尚史さんが10代の若者に向けた本です。

新聞広告を見て興味を持ちました。

今は価値観が多様化して、私が青春時代に正解と思われてきたものでも、正解とは限らなかったりと、昔にはない悩みが今の子には多くあるのではないかと思いました。

今の10代の子たちはどのようなことに悩んでいるのか。

これからの時代を生きる子を持つ親としても参考になるのではないかと思い、読み始めました。

この書籍がオススメの人
  • 10代の学生
  • 人間関係に悩んでいる若者
  • 同調圧力に悩んでいる若者
  • 10代の学生の親

人生に取り入れたい文脈

本も読むだけではなくて、行動に移さなければ意味がありません。

ここからは個人的に、人生に取り入れようと感じた、文脈や文意をいくつか紹介していきます。

「ひとりひとりが自分の好きなものを見る」というのは素敵な時代

1963年にNHKの紅白歌合戦の視聴率は81.4%で、1984年まではほぼ70%前後だったようです。

今のように他にたくさん見るものがなかった時代ですが、国民の大半が大晦日には紅白歌合戦を見ていたことになります。

母の話を聞いても、大晦日の紅白歌合戦だけではなく、「8時だョ!全員集合」も家族全員で見る習慣があったと言います。

家族全員で1つの番組を楽しみにするエピソードは私からすると少しうらやましくも感じますが、本書では大晦日に「紅白歌合戦」をみんなでそろって見るという時代には、もう戻れなくなったと述べられています。

いいのか悪いのかは別として我が家がそんな状態で、家族それぞれが同じ空間にはいるのですが、それぞれが別のネット動画を見たりすることが多いです。

各自、他人が見ている動画にはあまり興味が持てません。

「ひとりひとりが自分の好きなものを見る」というのは素敵な時代と述べられています。

誰もガマンしないで、自分の好みを追求できるのです。

「みんな仲良く」が大切じゃない

私は「みんな仲良く」が大切だと教えられてきた世代です。

しかし本書では、「みんな仲良く」が大切なのではなく、「嫌いな人とも一緒に協働すること」が大切と述べられています。

みんな仲良くというのは大人でも無理な話です。

確かに、社会に出て、たまたま同じ職場になった好きになれない同僚や上司とも、好き嫌いを抜きにして協働しなければならない場面はあります。

私の所感ですが、このことは考えれば分かりそうなことですが、親世代は「団結すること」が大切と教えられてきたので、子どもの教育となると「団結すること」が大切という建前が出てしまっているのかもしれません。

でも本書では「団結すること」が一番だと思っている大人は、まだまだ多いと述べられています。

例えば、スポーツチームが団結するのは、「勝つため」です。

当たり前ですが、それが一番の目標です。

でも、いつのまにか「団結すること」が、一番の目標になってしまうことが、この国ではとても多いと述べられています。

「勝つためにどうしたらいいか?」が重要なのではなく、「団結するためにどうしたらいいか?」が重要になってしまっています。

大切なことを決めるときはよく対話する

本書では、大切なことを決める時、安易にジャンケンや多数決に頼らないことを推奨しています。

多数決で決定する場合、気をつけないと、少数派に対する暴力になってしまいます。

ジャンケンや多数決は正しさとは何の関係もありません

ジャンケンや多数決によって、とんでもない間違いが決まることだってあります。

多数決に頼らないで、「対話」を続けることが大切なのです。

ジャンケンや多数決を取ってもいいのは、「たいした問題じゃない」時です。

「たったひとつの正解」のある勉強は、多様な視点を身につけるため

「レ点」という人のツイートで「たったひとつの正解」のある勉強をする理由が書かれていました。

勉強をなぜするのか親に訊いたときに、コップを指して「国語なら『透明なコップに入った濁ったお茶』、算数なら『200mのコップに半分以下残っているお茶』、社会なら『中国産のコップに入った静岡産のお茶』と色々な視点が持てる。多様な視点や価値観は心を自由にする」

「たったひとつの正解」のある勉強は、多様な視点を身につけるためにあります。

知識をたくさん身につければ身につけるほど、いろんな角度からものを考えられるようになります。

それは、あなた自身を間違いなく助けてくれます。

成績のためではなく、多様な視点を得るために「たったひとつの正解」のある勉強をするのです。

やがて来る「たったひとつの正解」のない問題に取り組むために。

エンパシーを育てる

相手の立場に立てる能力は「エンパシー」です。

それに対して相手に同情するのが「シンパシー」です。

被災地を例に挙げると「折り鶴」を送る人は、同情とかおもいやりの「シンパシー」がとても強い人だと思われます。

でも、被災地の人に必要なのは「折り鶴」ではなく、水や食料、新しい衣類などだったりします。

被災地では何が必要なんだろう、何が足らないんだろうと、相手の立場に立って考えられる「エンパシー」の能力が高い人が求められるます。

「エンパシー」を育てるためには、自分以外の人の気持ちや考え方を知ることが重要です。

映画やマンガ、小説の物語には、自分以外の人物の気持ちや考え方がたくさんあります。

まったく理解できない行動をとった人物の動機とか目的が描かれて、「なるほど。だから、こんなことをしたのか」と「エンパシー」の学びになることがあります。

他にも、 学芸会や友だちとの遊びで「他人を演じてみる」という方法もあります 。

多様な視点の話に戻りますが、たくさんの言葉を知れば、たくさんのことを考えられるようになります。

いろんな言葉を知れば、いろんな視点を持つことができます。

いろんな人の立場で、いろんな見方ができるようになれば、「エンパシー」の能力が高い人になれます。

「友だちが多いほうが素敵」を疑え

「喜びが二倍に、悲しみが半分に」ならないなら、友だちをやめた方がいいと著者は考えています。

友達をやめるというのは人によっては覚悟が必要ですが、そんなときは「友だちのふりをする苦痛」 と「ひとりのみじめさ」を自分で天秤にかけることを勧めています。

そもそも、「友だちが多いほうが素敵」とか「友だちが少ないとみじめ」とか、友だちの数で、人間性を判断される空気があると著者は感じています。

多ければ多いほどいい。

そう思い込んでしまった大きな原因のひとつは、「一年生になったら」っていう、あの歌が思い浮かびます。

「いちねんせいになったら ともだちひゃくにんできるかな」という歌詞があります。

あの歌が、「友だちが多いことはよいこと」「友だちがいないことは恥ずかしいこと」と無意識に刷り込んでいるのです。

世間の風潮を疑えと言う意味では、SNSも同じですね。

「いいね」やフォロワーが思ったより増えなくても気にすることはありません。

SNSは、本当に熱い「いいね」と、なんとなくポチッと押した「いいね」の違いを教えてくれません。

あなたの写真や文章が本当に好きだと思ってくれた熱い「いいね」ひとつは、なんとなくポチッただけの、すぐに忘れてしまう「いいね」100より、はるかに価値があると著者は述べています。

まとめ

「多様性」の時代に、「君はどう生きるか」というアドバイスが書かれた本でした。

10代に向けて、著者が語りかけるようなスタイルの本で読みやすかったです。

「多様性」は素晴らしいと思われていますが、じつは「多様性」はしんどいのです。

大人も、子供と向き合う際に価値観をアップデートしていかなければならないと感じました。

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