何のために「学ぶ」のか|外山滋比古、前田英樹、今福龍太、茂木健一郎、本川達雄、小林康夫、鷲田清一

本を手に取ったきっかけ・感想

図書館の返却棚にあり、タイトルと目次に惹かれ、偶然手に取った本です。

本書は知の最前線で活躍している専門家たちが大学の講義と同じクオリティで「学問」を紹介し、それをまとめた書籍です。

テーマ別の構成になっており、コンパクトで、分かりやすくまとまっており知的好奇心をかきたてる内容になっています。

変化の時代を生き抜くために、学ぶ意味や、学ぶ事自体を見つめ直す一冊になりました。

今回は外山滋比古さん、前田英樹さん、今福龍太さん、茂木健一郎さん、本川達雄さん、小林康夫さん、鷲田清一さんの共著書、「何のために「学ぶ」のか」を解説します。

この書籍がオススメの人
  • 学生
  • 「学びたい」と考えているすべての人

人生に取り入れたい文脈

本も読むだけではなくて、行動に移さなければ意味がありません。

ここからは個人的に、人生に取り入れようと感じた、文脈や文意をいくつか紹介していきます。

自分の体を使って発見したものは忘れない(前田英樹)

言葉で教えられたものは、ただの知識ですので、すぐに忘れてしまいます。

一方で、自分の体を使って発見したものは忘れません

そういうものは知識ではなく、身についた自分の技になっています

これは自分自身の経験でもすごく分かります。

知っているのと、できるのとでは想像以上に違います。

私は職業柄、BIツールやExcelを駆使することが多いのですが、どこでそんな知識を身に着けたのか、どこで学んだのかよく聞かれます。

確かに、体系的な知識を学ぶ努力はしましたが、仕事で成果として発揮できているのは、圧倒的に実務をこなし、これらのツールを駆使したことによるものです。

なので、教科書を最初から最後まで読んでから行動に移すのではなく、手を動かして、やり方が分からなければ教材に戻って調べ、またやり方がわからなければ教材に戻って調べ、更に効率化できないかと不満に感じたら教材に戻って調べということを何回も繰り返していました。

よく使う、動作は次第に調べないでも身についていきます。

ツールを完璧に使いこなしているように見えますが、大きな誤解で、使いこなしているのは業務で必要とされているほんの一部の機能だけです。

いちばん大事なのはアウトプットで、ツールはそれを最大化する手段に過ぎません。

田坂 広志さんは著書「能力を磨く-Al時代に活躍する人材「3つの能力」-」で「知識」とは「言葉で表せるもの」であり、書物やウェブで学ぶことができる「文献的知識」と述べています。

一方で今後のAI時代では、「文献的知識」ではなく「言葉で表せない」経験や体験を通じてしか掴むことができない「智恵」(体験的知恵)が重要になると述べています。

はっきり取り出して教えられないものを見抜いて型を盗む(前田英樹)

前田英樹は独学の重要性を本書で述べています。

特に重要なのが、言語化できない部分です。

例えば、あなたが「ちょっといいな」と思う先生に出会うとします。

あなたがその先生に「ちょっといいな」と惹かれているのは、豊富な専門知識ではなく、言葉では言い表しづらい、身ぶりや型かもしれません。

これらは先生に教えてくれと頼んでも先生自身がはっきり取り出して教えられるものではないかもしれません。

元日本プロ野球選手・メジャーリーガーのイチロー選手はあるインタビューで次のようなことを言っていたそうです。

「僕は天才ではありません。なぜかというと自分がどうしてヒットを打てるかを説明できるからです。」

あのイチロー選手でさえも天才と認めるような人とは、逆に言うと、自分がどうしてできるのか考えたことがないし、説明しろと言われても困るけど、意識しなくても簡単にできる人ということなのかもしれません。

山口 周さんは著書「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」」で言語化できるということは、全てコピーできるということと述べています。

対象的にコピーという攻撃を受けた際に比較的ポジションを守ることができるものとして、ブランドに付随するストーリーと世界観が挙げられています。

これらは、中々言語化が難しい側面があります。

言語化が難しい「なんかいいな」と思う点や、天才が意識せずに自然とできていることに対して、本書でおすすめしているのが学ぶ側の人が、見抜いて型を盗むということになります。

つまり独学が大切だということになります。

「好きなことをする」ではなく「世の中で大切なことをする」(本川達雄)

本川達雄さんは本書で、以下のように述べています。

もしも君たちが「自分の好きなことを仕事にしなさい」という指導を受けたなら、「この人は私を不幸にしようとしている」と考えたほうがよろしい。だから、職業を選ぶ際は「好きなことをする」ではなく「世の中で大切なことをする」と考えたほうがよい。特別に好きではないけれど嫌いではない、これだったら私は結構やれるし、それなりに社会の役に立っているなあ、と思えるものを見つけていくことが、現実的な職業選びだと私は考える。

人によっては、職業選びの価値観が色々ありますけれども個人的には共感しました。

みんなが自分の好きなことを仕事にできるわけではありません。

メジャーリーガーだったら大谷翔平選手のように、野球が好きなだけではなく、投手とバッターの両方で超一流の活躍をできるような才能があり、さらに他人よりも努力ができるという人もいます。

好きなだけでは決してなれない職業はあると思います。

社会には需要と供給があります。

自分の好きなことで自己実現できればいいですが、「好きなことをする」というハードルを少し下げて、「嫌いではない」ことで世の中の役に立つようなことをすると考えると、もう少し、職業選びの幅も広がりそうです。

われわれは自分が誰かの役に立っていると思えたときにだけ、自らの価値を実感できる。

嫌われる勇気|岸見 一郎

自分が持つ技や能力を磨くことを忘れるな(鷲田清一)

鷲田清一さんは本書で、近代社会は、全員が責任を持った「一」である市民社会をつくろうとしていたはずなのに、結局私たちは「市民」ではなく「顧客」になってしまった、と述べています。

「一」というのは人は全て平等で同じだという捉え方をするものです。

投票がわかりやすい例かもしれませんが、総理大臣もフリーターも皆、一票の重さは変わりません。

また「市民」とは、自分たちの大事な問題は自分で判断し自ら担う主体を意味しています。

私たちは、自分たちの安心と安全のためにプロを育て、「委託」するという道を開拓してきました。

しかしその制度の中で暮らすうちに、自分が持つ技や能力を磨くことを忘れてしまいました。

自分で物事を決めて担うことができる市民ではなくなり、ただのサービスの顧客に成り下がったのだと述べています。

本書では例として、出産、調理、排泄物の処理、治療、看護、教育、子育て、交渉などの生きるうえで欠かせない事柄を、私たちは知らないうちにすべて、他人に任せるようになったと紹介しています。

これは大企業という環境で仕事をしているとよく感じる危機感です。

大企業というのはたくさんの部署があり、かなり分業体制になっています。

また、自部署がこれまでやっていた業務をアウトソース(外部委託)するケースも多く、気がつけば、自社には知見やノウハウがあまり残っておらず、外部の委託先に頼らざるを得ない状況になっているケースが見られます。

コンサルの依存度も以前より高くなったように感じます。

私が普段、危機感を感じていることについて言語化されていましたので紹介をしました。

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