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信越化学(4063)銘柄分析
信越化学は塩化ビニル樹脂、半導体シリコンウェハー、シリコーン、か性ソーダ・メタノール、レア・アースマグネット、セルロース誘導体などの主要製品において世界トップシェアを誇る総合化学素材メーカーです。
事業構成比
事業セグメント別売上構成比は次のようになっています。
売上高の構成比率上位を占めている、生活環境基盤材料と電子材料が収益率も高いことがわかります。
半導体素材メーカーとして注目されている企業の一つですが、事業ポートフォリオは多岐にわたり、主要な事業の中の一つという位置づけですので、良くも悪くも、一部の半導体メーカーや半導体製造装置よりは株価の値動きが緩やかです。
生活環境基盤材料事業
主 要 製 品 ・ サ ー ビ ス | 用途 |
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塩化ビニル樹脂(塩ビ) | 耐久性の高い上下水道管、樹脂窓、農業用ビニールハウス、建築、サイディング材など |
か性ソーダ | リチウムイオン電池や高吸水性ポリマーの原材料、水処理など |
ポバール | 車のフロントガラス、医薬品添加剤など |
中でも塩ビは、米国、欧州、日本の3拠点で合わせて年産444万トンの生産能力を有し、世界中に安定供給を行っています。
電子材料事業
主 要 製 品 ・ サ ー ビ ス | 用途 |
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シリコンウエハー | 家電・デジタル機器、自動車に使われる半導体の基幹材料 |
フォトレジスト | 感光材料として半導体製造工程に使用 |
フォトマスクブランクス | 回路描画用パターン原版として半導体製造工程に使用 |
封止材料 | 半導体デバイスに使用 |
レア・アースマグネット | 環境対応車や電化製品などに使われるモータの省電力化に使用 |
高純度の合成石英 | 光ファイバーの原料などに使用 |
機能材料事業
主 要 製 品 ・ サ ー ビ ス | 用途 |
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シリコーン | 化粧品原料、トイレタリー製品、エアバック、省燃費タイヤ、コンタクトレンズ、建物、太陽光パネル、プラスチック製品、繊維処理剤、家電、デジタル機器 |
セルロース誘導体 | 医薬の錠剤のコーティング剤、自動車の排ガス用フィルター、食品、工業用など |
合成性フェロモン | 環境負荷のない害虫防除剤 |
液状フッ素エラストマー | 自動車、航空機、電子機器、光学用途など |
ペリクル | フォトマスク用の防じんカバーとして、半導体製造工程に使用。 |
金属ケイ素 | シリコーン、半導体シリコン、合成石英などの主原料として使用 |
負極材 | 電池特性の向上のため、リチウムイオン電池に使用 |
幅広い産業で使われるシリコーンは、1953年に日本で初めて事業化して以来開発を重ね、現在では5,000種を超える製品を取りそろえています。
半導体シリコンは、多額の設備投資負担が必要であることに加え、半導体産業の需要変動の激しさから企業の淘汰が進み、上位企業に寡占された市場のようです。
信越化学はスケールメリットを活かし、トップシェアを築いてます。
加工・商事・技術サービス事業
塩ビ、シリコーンなど各種樹脂の加工製品を信越ポリマー(株)が手掛けており、グループの製造工場の設計、建設事業を信越エンジニアリング(株)が手掛けています。
主 要 製 品 ・ サ ー ビ ス | 用途 |
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入力デバイス | 自動車のステアリングやパワーウインドウ向けなど |
ウエハーケース | シリコンウエハーの輸送用ケース、デバイスメーカーの工程内搬送ケース |
ラッピングフィルム | 伸びと密着性に優れた塩化ビニル製のラップ |
エンジニアリング | グループのプラント設計、建設や設備管理 |
真空重ね合わせ装置 | 大型液晶パネルの生産 |
マイクロLEDチップ移送装置 | 高速かつ正確にマイクロLEDチップを移送 |
海外売上高比率
海外売上高比率は80%を超えているグローバル企業です。
財務情報分析
ここからは財務情報分析を紹介します。
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貸借対照表(B/S)
以下は、信越化学のバランスシートです。
非常にキャッシュリッチな会社であり、いざとなれば現預金で全ての流動負債・固定負債を返せる状態にありますので、実質無借金経営となっています。
直近自己資本比率は82.7%と非常に高いです。
損益計算書(P/L)
以下は、信越化学の損益計算書です。
直近の営業利益率は30%以上と収益性は非常に高いです。
売上高・営業利益・営業利益率・純利益
2010/3期~2020/3期は10期連続増益でした。
平均すると2桁の利益成長が続いており、収益性が上がっていることがわかります。
有価証券報告書より作成
株主還元
配当に加え、ここ数年は自社株買いも積極的に行っています。
2023年4月1日付で1株→5株の株式分割を行っています。
一株当たりデータ
ROA(総資産利益率)ROE(自己資本利益率)
以下は、ROA、ROEで信越化学の収益性を折れ線グラフで示しています。
マネックス証券
- ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本
- ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産
一般的に、自社株買いを積極的に行っている企業の場合、純資産が減り自己資本比率が低下するのでROEが高くなります。
また、配当による株主還元を積極的に行っている企業は現金(内部留保)を減らすことになり、財務レバレッジが向上するので、ROEが高くなります。
財務レバレッジ=総資産/自己資本ですので、ROA(%) = 当期純利益/総資産に財務レバレッジをかけ合わせると、当期純利益/総資産 × 総資産/自己資本= 当期純利益/自己資本 = ROEとなります。
つまりROEはROA × 財務レバレッジということになります。
ROEは当期純利益を自己資本で割ったもので、株主視点の指標であると言えます。
一方、ROAは当期純利益を総資産で割ったものですので、全社的視点の指標であると言えます。
ここ数年は高い収益性となっています。
キャッシュフロー
以下は信越化学のキャッシュの推移を表しています。
今回の内容が参考になれば幸いです。