経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて|山崎 元 著

本を手に取ったきっかけ・目的

本書は著者から見て息子や娘のような年齢の、これから働き、お金を稼ぎ、増やして、使っていく「若い人」に向けて書かれた本です。

想定読者には著者の息子本人も含まれています。

山崎元さんの著書「経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて」について紹介します。

この書籍がオススメの人
  • 成人を迎える人
  • 大学生
  • 新社会人

人生に取り入れたい文脈

本も読むだけではなくて、行動に移さなければ意味がありません。

ここからは個人的に、人生に取り入れようと感じた、文脈や文意をいくつか紹介していきます。

致命的にならない程度のリスクを積極的に取って、対価も受け取る

お金の稼ぎ方では「株式」に上手く関わることが重要と本書では述べられています。

株式性の報酬を得る方法として以下のようなものがあります。

  1. 自分で起業する
  2. 早い段階で起業に参加する
  3. 報酬の大きな部分を自社株ないし自社株のストックオプションで支払ってくれる会社で働く(外資系企業に多い)
  4. 起業の初期段階で出資させてもらう

経済の世界は、リスクを取ってもいいと思う人が、リスクを取りたくない人から、利益を吸い上げるようにできています。

このことが、今はよりはっきりと現れつつあります。

「会社」は広い範囲の労働者から利益をピンハネできます。

株式性の報酬を利用することに成功した者は、この「会社」の一部を権利として持つことになります。

そして、その権利は、成長性まで含めて、さらに将来の分までまとめて評価された価値を「今」手に入れることができる手段でもあります。

だから、短期間に大きな資産を手に入れることができるのです。

著者の時代は、出世したり専門家になったりして「労働時間を確実に高く売る」のが無難な道でした。

「自分を磨き、リスクを抑えて、確実に稼ぐ」ことを目指すパターンでした。

自分に投資するという点は古いパターンと同じですが、時代は変わり、「失敗しても致命的でない程度のリスクを積極的に取って、リスクの対価も受け取る」のが、新しい時代の稼ぎ方のコツだと述べられています。

つまり、リスクに対する働きかけ方が逆方向に変わることになります。

尚、全員が必ずしも仕事で株式性のチャンスに恵まれるわけではないと思います。

そのような人は、インデックスファンドの長期投資が効率のいい株式リスクとの付き合い方になると述べられています。

これは、凡人でもできるけれども、一見偉そうな他の投資よりも優れた手法です。

お金にも働いて貰うという方法になります。

勉強会は幹事を引き受ける

著者は勉強会に「呼ばれる人」で満足していた点について、ビジネスパーソンとしてうかつだったと反省していました。

もし勉強会を自分で主宰するか、幹事を引き受けた場合、テーマ、講師、スケジュール、勉強会のメンバーを自分に都合良く選ぶことができます。

また、会の連絡などを通じてメンバーとの人間関係を強く結ぶことができるし、会の世話を通じて多少の「恩」を売ることもできます。

人脈と知識を拡げる上で「勉強会」は有力な手段になるのです。

私自身も、講師や演者を引き受けただけで満足をしていた部分がありました。

抜けていた視点になります。

ただ、私の経験上、「呼ばれる人」や「演者」を引き受けるだけでも、勉強会にオブザーバーとして参加するよりは大きな価値があると思っています。

講演や勉強会が終わった後、お声がけいただくことも結構ありましたので、人脈や知識を拡げる手段になりうるというのが個人的感想です。

「自分の嬉しいこと」を言語化せよ

幸福は、人生の全体を評価・採点して通算成績に対して感じるようなものではなくて、日常の折々に感じるもの(その時に感じるもの)だと述べられています。

「振り返ってみて、幸福だった(不幸だった)」という考え方・感じ方は、「サンクコスト*」なので前向きな意味がありません。

*既に発生していて回収が不可能なコスト

自分にとって、どのようなことが嬉しくて幸福に感じるのかに気づき、できたら、それを言語化することをおすすめしています。

例えば、著者の山崎元さんの場合

「私のモットーは、(1)正しくて、(2)できれば面白いことを、(3)たくさんの人に伝えること」

という具合にシンプルに言語化されています。

この言語化する意味について本書では、「上手くできると、ずいぶんスッキリする。」と息子に向けて書かれており、詳細な理由については直接書かれていませんでした。

しかし、息子の幸福な人生を願っていることが読み取れ、日常の一日一日、一時一時を大切するように書かれていたことから、幸福を感じる点を言語化することで、日常の折々の過ごし方が変わり、日常の折々で幸福を感じられる人生を目指してほしいという意図なのだと私は解釈しました。

モテない男は幸せそうに見えない

著者は幸せについて、次のようにいくつかの「基準」の組み合わせを試して考えてみたそうです。

「自由度+豊かさ」

「富+名声」

「自由度+豊かさ+人間関係」

「自己決定範囲の大きさ+良い人間関係+社会貢献」

「自由度+豊かさ+モテ具合」

すると、一点「モテ具合」という項目が異質で、どうやら妙に重要らしいことが分かったそうです。

モテない男は総じて幸せそうに見えないとのことです。

心からの興味を示しながら、相手の話を熱心に聞くこと

この表題がただ一つの「モテ」の秘訣だと述べられています。

ただこれは、著者の人生でそこそこ機能した仮説で、検証にはサンプル数が足りないので、 検証の続きと理論の発展を息子の代に託しています。

心からの興味を示しながら、相手の話を熱心に聞くのです。

ひたすら聞くのです。

これが肝心で、これだけでいいのかもしれないと述べられています。

自分語りはどこかに自慢やアピールが混じるので、一切いらないと述べられています。

著者は、世間を観察して、いわゆるスペックの高い男でも、自分語りが多い男は驚くほどモテないことに気がついたそうです。

ここで、他の書籍でも似たようなことが書かれていましたので紹介します。

人は、自分のことをたくさん話せた相手に好感を持つ

どんな相手も味方になる感じのよい伝え方|宮本 佳実 著

自分のことをたくさん聞いてもらったと感じた相手から、好感をもたれやすいことになります。

有効な投資

最後は、巻末付録の「大人になった息子へ 息子への手紙全文」の内容の中で私が印象に残った内容を紹介します。

受験勉強は辛かっただろうか。もっと別の分野に時間と努力を投入したかっただろうか。端的に言って、経済的なコストパフォーマンスは、貴君の場合勉強が一番有利だったと思う。世間一般でもそうした場合は多い。 競争が世界的になっていることを思うと、もう一段階他人に差を付けるための追加的勉強は、これまでの時間と努力の投資を活かす 「有効な投資」になるはずだ。興味のない分野は努力の効率が悪いので、興味のあるテーマを見つけて勉強するといい。

付録 大人になった息子へ 息子への手紙全文より

教育も投資と考える点は皆さんも参考になるのではないかと思います。

経済評論家らしさを感じます。

著者の息子の場合、勉強に投資をすることは投資対効果が良く、このことは多くの人に当てはまると述べられています。

私も、子どもに色々習い事を体験させ、興味を探っていた時期がありました。

また、これからの時代、例えば中学受験をさせることが正解なのだろうかという不安を感じていた時期もありました。

そのような、子育ての悩みの参考になりましたので取り上げました。

まとめ

著者の山崎元さんが亡くなる前に、息子に充てた内容ということもあり、山崎元さんの人生における教訓や、生き様、息子という大切な存在だからこそ親として伝えておきたい大切な内容が書かれていました。

愛情に裏付けされたその内容に表裏は感じられませんでした。

また、飾らない内容だったことも印象的で、山崎元さんの人生を振り返って、失敗だったと感じた点は素直に認め、その教訓を綴っています。

自立しようとしている息子を尊重し、応援し、文章から親としての愛情が感じられる内容でした。

山崎元さんは父親としても素晴らしい方だったのではないかと想像しました。

私は心に残る名著だと思いました。

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