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本を手に取ったきっかけ・感想
著者は「日本一アウトプットする精神科医」といわれるだけあって、本書執筆時点で以下のようなアウトプット習慣があります。
メルマガ 毎日発行:14年
Facebook 毎日更新:9年
YouTube 毎日更新:6年
毎日3時間以上の執筆:12年
年2~3冊の出版:11年連続
新作セミナー 毎月2回以上:10年連続
ベストセラーに「学びを結果に変えるアウトプット大全」があり、私も読んだことがありますので、著者のことは知っていました。

そんな著者のアウトプットを支えているのが、以下のインプットですが、アウトプットの量の割にインプットにはほとんど時間をかけていないことがわかります。
読書(スキマ時間のみ) :20~30冊/月
スマホ使用時間:30分以下/日
ネットからの情報収集:15~20分/日
本書ではそんな著者が実践している最短時間で最大効率のインプットをする方法を学びます。
今回は精神科医である樺沢 紫苑さんの著書、「学び効率が最大化するインプット大全」を紹介します。
- 最大効率でインプットしたい人
- インプットをアウトプットにつなげたい人
人生に取り入れたい文脈
本も読むだけではなくて、行動に移さなければ意味がありません。
個人的に共感した部分、覚えておこうと感じた部分、人生に取り入れてみたいと感じた部分を中心に取り上げています。
必ずしも書籍の内容の全体を俯瞰しているわけではありませんし、本記事は単なる要約ではありませんので、詳細は書籍を購入して確認してください。
感情刺激が刺激されたときに記憶に残る
当たり前のことを書いていますが、インプットをしたことがあまり身になっていないという課題感のある人は改めてこのことを認識すべきでしょう。
著者は「インプットをしたら2週間以内に3回アウトプットしないと記憶に残らない」と述べています。
しかしながら例外もあります。
それは感情が刺激されるような、 喜怒哀楽が伴う記憶です。
このような記憶はアウトプットしなくても、復習しなくても、圧倒的に鮮明に残ります。
この感情刺激を利用したインプット術として本書では以下のようなものが紹介されています。
①ストーリーを活用する (漫画化、 小説化されたビジネス書を読む)。
②好奇心を大切にする。 ワクワクすることを勉強する。
③本を買ったらすぐに読む。「読みたい!」という気持ちが強いうちに読む。
④「わからない!」と思った瞬間に検索する。
⑤大舞台で講演する (「緊張」「興奮」「教える」で記憶増強)。
⑥映画、美術鑑賞など、「感動」「学び」と連動させる。
⑦旅行 (緊張、興奮、 感動) から学ぶ。
非言語情報を受け取れることを軽視しない
書籍などの文字情報だけではなく、セミナーや講演で学ぶメリットは何でしょうか?
それは「言語的情報」 と 「非言語的情報」の両方が伝わるので、圧倒的に情報量が多い点にあります。
先程挙げた感情が揺さぶられる効果もありますので、記憶力を増強する脳内物質ドーパミンが分泌され、圧倒的に記憶に残ります。
インプットを記憶に残すことを重視するならば、より感情が刺激されやすい、オンラインでの参加よりもリアルでの参加を検討した方が良いかもしれません。
セミナーの目的は、「非言語情報」を受け取ることといっても過言ではありません。
「非言語情報」を受け取ることを目的にすると、セミナーの受け方も自ずと工夫をしなければなりません。
一つはノートやメモの取り方です。
下を見て、必死にノートをとっている人は、講師の顔が見えません。
講師は、表情や身振り手振りを使って、視覚的に多くの情報を伝えているのに、下ばかり見ている人は、そうした視覚的非言語情報をまったく受け取っていないことになります。
それでは、セミナーに参加している意味がありません。
本書では「前を向いている時間」と「下を向いている時間」つまり「講師を見ている時間」と「ノートをとっている時間」の割合は、「7:3」か 「8:2」 くらいを推奨しています。
ほとんどが前を向いていて、どうしても重要な 「気付き」を得たときにメモする、というイメージです。

二つ目としては受講する位置です。
講師の顔がよく見える最前列で受講しましょう。
講師の顔がよく見えないと、 表情などの視覚的な非言語情報が受け取れないことになります。
後ろのほうで受講すると、受け取ることができる情報の総量が圧倒的に減ってしまいます。
質問を前提に話を聞く
セミナーなどの受講の仕方でもう一つ参考になるものがありました。
「質問を前提に話を聞く」ということです。
講師からいつあてられても、3つ質問がいえるようにしておくことを本書では推奨しています。
話を聞きながら、ノートの余白に、「疑問」「質問」を瞬時に書き留めていけば、それができるようになります。

疑問、質問を書き留めるだけで、「わからない部分はどこ?」というアンテナが立つので、話に対して集中力や注意力が高まり、理解が圧倒的に深まります。
私自身はこのことはセミナーに限らず、会議などでも実践しています。
メモを取りながら、参加することも多いですが、メモを取るのは疑問に感じた点、自分ならこう思うという意見、自分なりに整理してみるなど、広い意味で感情が刺激されたときです。
結果的にこの方が、当事者意識で参加できて、理解も進み、記憶にも定着すると実感しています。
質問前提でセミナーや会議に参加することで、メモの取り方も自ずと変わるのではないかと思います。
DIKWモデル
情報工学ではDIKWモデルというものがあります。
「データ」「情報」「知識」「知恵」を次のように定義しています。
データ data | そのままでは意味を持たない数字、記号、シンボル | 見える |
情報 information | データを整理して意味づけたもの | 理解できる |
知識 knowledge | 情報をまとめて体系化したもの | 使える |
知恵 wisdom | 知識を正しく認識し、価値観やモラルに昇華したもの | 行動できる |
「データ」を整理、集計すると「情報」になり、「情報」を分析、解析、体系化すると「知識 」になり、「知識」を実践、経験、アウトプットすると「知恵」になります。
上の表では、「情報」のように上のものほど鮮度が重要で劣化が早くなります。
一方で「知識」のように下のものほど、年月が経っても劣化しません。
情報収集はほどほどに
インプットにおいて、 情報と知識のバランスを整えることが重要だと本書では述べられています。
著者の実感値では、 情報:知識は、 3:7以下にすべきだと述べられています。
2:8とか1:9がさらにベターです。
冒頭で著者はアウトプットの割にインプットが少ないことをを紹介しましたが、実際に著者の場合、 1:9だそうです。
「情報をたくさん集める」 行為は、結果としてそこに時間がとられるので 「知識」と「知恵」 を減らすことにつながります。
ネットからの情報収集はほどほどにして、読書によって 「知識」を増やし、アウトプットによって「知恵」 を増やすことが重要です。
バランスのよいインプットで自己成長は最大化します。
本書を読んで、SNSで情報収集ばかりして、本で知識を増やす時間がほとんどないというのは愚の骨頂だと個人的には感じました。
スマホやSNSによるインプットの弊害
今や多くの人がスマホやSNSに時間を奪われています。
本書ではスマホやSNSによるインプットの弊害に関するエビデンスがいくつか紹介されていましたのでまとめておきます。
ミシガン大学の研究
対象者:18歳から23歳の若年成人82名
調査方法:2週間にわたり1日5回のテキストメッセージを送信し、その時点での感情やFacebookの使用状況、対面での交流について調査
主な結果:Facebookの使用が増えるほど、直後の気分や2週間後の生活満足度が低下することが明らかにされました。一方で、対面での交流や電話での会話は、幸福感の向上に寄与していました。
孤独感を紛らわすためにSNSを利用する人は逆効果で、SNSの利用時間が長いほど、孤独感、抑うつは強まるのです。
逆に、SNSの利用を30分以下に制限したところ、孤独感や抑うつに大幅な軽減が認められたそうです。
Kross, E., Verduyn, P., Demiralp, E., Park, J., Lee, D. S., Lin, N., … & Ybarra, O. (2013).
Facebook Use Predicts Declines in Subjective Well-Being in Young Adults.
PLOS ONE, 8(8): e69841.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0069841
Verduyn, P., Ybarra, O., Résibois, M., Jonides, J., & Kross, E. (2017).
Do Social Network Sites Enhance or Undermine Subjective Well-Being? A Critical Review.
Social Issues and Policy Review, 11(1), 274–302.
https://doi.org/10.1111/sipr.12033
ピッツバーグ大学の研究
対象者:アメリカ在住の19〜32歳の若年成人1,787人。
調査方法:SNSの利用時間と頻度を自己申告で収集し、うつ病の症状はPHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)を用いて評価。
主な結果:SNSの使用時間が最も長いグループは、最も短いグループと比べて、うつ病のリスクが2.7倍高いことが判明しました。
SNSの利用頻度が高ければ高いほどうつ病になりやすいようです。
Primack, B. A., Shensa, A., Sidani, J. E., Whaite, E. O., Lin, L., Rosen, D., Colditz, J. B., Radovic, A., & Miller, E. (2017).
Social Media Use and Perceived Social Isolation Among Young Adults in the U.S.
American Journal of Preventive Medicine, 53(1), 1–8.
https://doi.org/10.1016/j.amepre.2017.01.010
Primack, B. A., Shensa, A., Escobar-Viera, C. G., Barrett, E. L., Sidani, J. E., Colditz, J. B., & James, A. E. (2017).
Use of multiple social media platforms and symptoms of depression and anxiety: A nationally-representative study among U.S. young adults.
Computers in Human Behavior, 69, 1–9.
https://doi.org/10.1016/j.chb.2016.11.013
東北大学、 川島隆太教授の研究
対象者:仙台市の小中学生約6万人
調査方法:学力検査の成績とスマホ使用時間に関するアンケート結果を分析
主な結果:スマホの使用時間が1時間増えるごとに、数学・算数の成績が約5点減るという結果が出ています。 同研究では「勉強時間」ごとの検討も行っており、「勉強時間30分以下でスマホを使わない生徒」 より 「勉強時間4時間以上でスマホを使う生徒」のほうが成績が低い、という驚くべき結果になっています。
スマホを使用することで勉強した結果が無効化される、ということです。
川島教授によれば、 テレビ視聴、 テレビゲーム、 スマホ使用を長時間行うと、 そのあとの30分~1時間、 前頭葉の機能低下が続き、 前頭葉の機能が低下した状態で必死に勉強しても、その間の学習効果が得られないといいます。
川島隆太, 他(2014)
スマートフォン等の利用と学力との関連性についての調査研究(仙台市教育委員会と共同研究)
参考報道記事:朝日新聞EduA
川島隆太(2017)
『スマホが学力を破壊する』(集英社インターナショナル)
PRESIDENT Online 記事(2018)https://president.jp/articles/-/24764
このように、 SNSやスマホの長時間使用が脳に悪影響を及ぼすデータが山ほど出ています。
では何時間くらいならいいのかというと、「1日1時間以下」 が推奨されます。
SNSやスマホはダラダラ使わない。
きちんと時間を制限して使わないと、 確実に脳のパフォーマンスを下げるのです。
「受動的娯楽」 と 「能動的娯楽」
私自身は趣味をあまりこのような観点で考えたことがありませんでしたので新しい発見になりましたが、娯楽には2種類あります。
フロー概念の提唱者であり集中力研究の世界的権威であるチクセントミハイ教授は、娯楽を次の「受動的娯楽」 と 「能動的娯楽」 にわけました。
特徴 | 例 | |
受動的娯楽 | ほとんど集中力を使わない スキルを必要としない | テレビ ゲーム ただスマホを見る |
能動的娯楽 | 集中力を要する スキルの向上を要する 目標設定を要する | 読書 スポーツ ボードゲーム(チェスや将棋) 楽器演奏 |
「能動的娯楽」をする時間が長い人は、フロー(時間を忘れるような高度の集中) 状態に入りやすく、「受動的娯楽」を多くする人は、フロー状態に入りづらいようです。
チクセントミハイ教授は、能力を発揮するフロー体験は人を成長させ、受動的な娯楽は何も生まないといいます。
確かに、私自身は能動的な娯楽として、最近、絵画を始めましたし、読書もあります。
これらは、趣味の中でも仕事以外で自身の成長を感じられる点で、他の受動的娯楽とは明らかに異なることを実感しています。
能動的娯楽は、集中力を高めるトレーニングとなり自己成長につながる一方で、 受動的娯楽は何も生まない、ただの時間の浪費です。あなたは、自分の貴重な自由時間を、どちらに使いたいですか?