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本を手に取ったきっかけ・感想
最近の世の中は、エッセンシャルではない消費が重視され、エッセンシャルなものが軽視されると感じる場面がよくあります。
消費する側だけではなく、供給する側の賃金もそのようになっている側面があります。
直美が例として挙げられますが、医療の公共性と、職業選択の自由(働きやすさや賃金を含む)とのバランスという難しい問題があります。
本書ではエッセンシャルなものが欠乏する世の中になるのではないかという最近感じている個人的な問題意識がまとめられていたので、読んでみました。
私たちが無意識に受け入れている社会主義よりも資本主義という価値観や、国による計画経済の是非についても触れている点が興味深いです。
- 現代資本主義の行き詰まりを感じている人
- 社会の供給力不足に問題意識・危機感がある方
- 格差や社会の分断に問題意識がある人
人生に取り入れたい文脈
本も読むだけではなくて、行動に移さなければ意味がありません。
この記事では個人的に共感した部分、覚えておこうと感じた部分、人生に取り入れてみたいと感じた部分だけを断片的に取り上げています。
必ずしも書籍の内容の全体を俯瞰しているわけではありませんので、詳細は書籍を購入して確認してください。
レント論とテクノ資本主義
アプリを作っていないアップルは、アップストア上で販売されるアプリ代の30%もの手数料を徴収しています。

この手数料は場所代、英語でいう「レント(rent)」です。
米国のテック企業が提供するプラットフォームに社会全体が依存するデジタル経済のもとでは、レントこそが主要な金儲けの方法になっています。
そのレントを徴収するデジタル・プラットフォーマーが、世界経済の支配者として、のし上がってきているのです。
これが、デジタル空間上のレントをテック企業が独占するテクノ資本主義です。
レント論は地代論にとどまらず
もし『資本論』の叙述と歴史が合致し、マルクスが正しいとすれば、レントで利潤を獲得するテクノ資本主義は、最新の資本主義であると同時に、資本主義の最終的な姿だということになります。
この点は、これまでのマルクス研究においても指摘されずにきました。
また、レント論もほとんど注目されてきませんでした。
レント論は農業を中心とした地代論と同一視され、時代遅れのものとみなされてきたからです。

けれども、その見方は誤っているというのが本書の主張です。
レント論こそ、現代資本主義の行き詰まりを理解し、人類の未来を展望するうえで決定的な視点を提供してくれるからです。
ブルシット・ジョブやブルシット消費が欠乏を加速する
テクノ資本主義に完全に移行したとしても、戦後のフォーディズム体制のような持続的経済成長と完全雇用に基づいた安定した社会統合はけっして実現できないことに問題があります。
テクノ資本主義に移行することで、たとえば、独占を強固にするための仕事や欲望・情動を煽る仕事に代表される社会的使用価値を生まない「ブルシット・ジョブ(なくなっても誰も困らない高給取りのクソ仕事)」が増えています。
さらに、レントで儲けた金持ちがあり余った財産をみせびらかしに使うだけの「ブルシット消費(なくなっても社会に影響のないモノやサービスのクソ消費)」も増大していきます。

金持ちだけではなく私たちもだらだらYouTubeを見たり、ささいなことでAIを使ったりするだけでも、膨大な電力が消費されます。

需要と供給の両側でリソースの無駄遣いをする社会的傾向が、恒久的な欠乏経済の時代には自殺行為になります。
生存に欠かせないエッセンシャルな食料生産や再生エネルギーの普及などを軽視する一方で、わざわざ欠乏を人工的に引き起こしているです。
テクノ資本主義のもとでは、経済的、政治的、社会的不安定性が増大していくのです。
現在、日本社会を揺るがしている米不足、薬剤不足、ガソリン代高騰などは、けっして一時的な問題ではないのです。
実体経済の停滞による供給力不足はまさに日本でも起きており、今後、ますます深刻になる可能性があります。
これは気候崩壊やテクノ資本主義が進んだ時代に特徴的な、恒久欠乏経済の序曲にすぎないのです。
ハイエクの呪縛
私たち、特に日本人は市場に余計な公的介入をしてはならないと、信じ込んでおり、そうした市場信奉は「呪縛」のように、私たちの思考を拘束しています。
それを本書では「ハイエクの呪縛」と呼んでいます。
ハイエクとは自由市場を擁護し、1970年代以降の経済政策にも大きな影響力をおよぼした経済学者フリードリヒ・ハイエクからとっています。
資本主義の暴走が引き起こす環境 =社会崩壊を止めるためには、国家を中心とする、より大規模な経済の「社会化」と「計画化」が必要であり、このハイエクの呪縛の意味を理解し、解体していくことが重要です。
市場だけに任せた場合、利潤の最大化するように力が働きます。
その結果、産業は空洞化し、短期のキャピタル・ゲインを狙う投機とデジタル・レントの独占によって格差を拡大して、ブルシット・ジョブやブルシット消費ばかりを増やしてきたというのは前述の通りです。
バイプロLOG 