能力を磨く-Al時代に活躍する人材「3つの能力」-|田坂 広志 著

本を手に取ったきっかけ・感想

図書館の返却棚にあり、タイトルと目次に惹かれ、偶然手に取った本です。

AI時代が到来すると、言語化できる知識に多くの人がアクセスできるようになり、その価値は低下していきます。

似たようなことが、他の書籍でも書かれていましたので、本書の中でも特に印象に残りました。

また、AI時代のマネジメント力についても記載されており、私の日々の経験の中でも共感することが言語化されていましたので印象に残りました。

今回は、田坂 広志さんの著書「能力を磨く-Al時代に活躍する人材「3つの能力」-」について紹介をします。

この書籍がオススメの人
  • ビジネスマン
  • AI時代のキャリアを考えている人

人生に取り入れたい文脈

本も読むだけではなくて、行動に移さなければ意味がありません。

ここからは個人的に、人生に取り入れようと感じた、文脈や文意をいくつか紹介していきます。

Al時代に活躍する人材「3つの能力」

詳しく体系的に知りたい方は書籍を読んでいただきたいですが、タイトルにもある「3つの能力」について簡単に解説します。

これまでの高度知識社会においては、知的労働に求められる能力として、次の「五つの能力」がありました。

  1. 「基礎的能力」(知的集中力と知的持続力)
  2. 「学歴的能力」(論理的思考力と知識の修得力)
  3. 「職業的能力」(直観的判断力と智恵の体得力)
  4. 「対人的能力」(コミュニケーション力とホスピタリティカ)
  5. 「組織的能力」(マネジメント力とリーダーシップカ)

これからのAI時代には、このうち、「基礎的能力」と「学歴的能力」の多くは、AIによって代替されていくことが想定されます。

これからの社会で活躍する人材となるためには、「職業的能力」「対人的能力」「組織的能力」という三つの能力を身につけ、磨いていかなければならないとを述べられています。

知識が価値を失う社会

情報革命が進むことによって生まれてくる「知識社会」は、「知識が重要になる社会」ではなく、「知識が価値を失う社会」に他なりません。

インターネットが普及してから現在に至るまでの皆さんの生活の変化を振り返るとそのことがよくわかります。

PCを持ち歩いていなかった人でも、スマホが普及してから、どこでも情報を検索して調べることができるようになりました。

最近では検索をしなくてもAIが情報を教えてくれます。

自動翻訳技術が発達し、どの言語で記されている情報や知識であっても、瞬時に、必要な言語に翻訳して取り出してくることができます。

その結果、「知識」が価値を失うようになりました。

体験的智恵

「知識」とは「言葉で表せるもの」であり、書物やウェブで学ぶことができる「文献的知識」です。

一方、「言葉で表せない」経験や体験を通じてしか掴むことができない「智恵」(体験的知恵)が今後重要になります。

ここまでの内容で、私がこれまで読んできた書籍の中で、似たようなことを言及し、印象に残っている文脈をいくつか紹介します。

言語化できるということは、全てコピーできるということ。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」|山口 周 著

事実というのは、誰にでも瞬時にアクセスできるようになると、一つひとつの事実の価値は低くなってしまうものなのだ。

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代|ダニエル・ピンク 著

著者は自身の目から見たときに「知識」を掴む人と、「智恵」を掴むタイプの人の違いを次のように分けています。

プロフェッショナルがその技術や心得について語っているときを想像してみてください。

「知識」を掴む人はその言葉を一言一句、漏らさずメモに取ろうとします。

学ぼうという姿勢には敬服しますが、多くの場合、プロフェッショナルが語っている「智恵」を、単なる「知識」として紙の上に記録しているだけという状態です。

本当に、その「智恵」を掴むタイプの人は、むしろ、メモを取るよりも、自身の頭の中で、過去の経験を「追体験」している人であると述べられています。

私が読書メモとして、ブログに記録するようになったのもこの点が一つの理由です。

読書をして重要な内容を読書ノートにメモするだけでは、知識を掴んで満足した気になっただけでした。

しかし、内容を過去の自分の経験と照らし合わながら読書を続けていると、教訓としてうまく言語化がされている本との出会いが多くありました。

このように追体験をしながら掴んだ文脈は、私の心中ではより強く残るものばかりでした。

なので、読書も大事ですが、読んだときに心に響くような経験も重要であると今は感じています。

本書では、これからの時代は、「書物で学べる知識」よりも、「経験でしか掴めない智恵」を、どれほど身につけているかが、人間の存在価値になっていくと述べられています。

読書ブログでは、本の目次の最初から最後までを体系的に要約するのではなく、あくまでも、自分自身の追体験を通じて心に残った文脈を中心に記録するようにしています。

追体験について、うまく言語化されているものを記録することで、AI時代であっても、自身の人材価値を蓄積していくことを目指しています。

つまり、この作業は書籍の紹介も兼ねていますが、半分以上は自分のためのにやっています。

「学歴的能力」(論理的思考力と知識の修得力)

これからの時代、「論理的思考」や「知識の修得力」(さらに、それに基づく「専門的知識」の習得力)という能力は、極めて高度なレベルでAIによって置き換わっていくことになります。

これらの能力は高学歴の優秀さを表す「学歴的能力」です。

我が国の教育制度の下で生まれてくる「高学歴」の人材の「優秀さ」は、これから急速に発達するAIによって置き換わってしまう「優秀さ」であると述べられています。

一方で、顧客の何気無い表情や言葉から、顧客の気持ちを敏感に感じ取る「直観的判断力」や「感覚的判断力」はAI時代に我々が身に着けなければならない力として紹介されています。

「正解のコモディティ化」

倫理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある。
他人と同じ正解を出すということでもあるわけだから、必然的に「差別化の消失」と言う問題を招くことになる。
今日、多くのビジネスパーソンが、論理的な思考力、理性的な判断力を高めるために努力しているわけだが、そのような努力の行き着く先は「他の人と同じ答えが出せる」という終着駅、つまりレッドオーシャンでしかない。


世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」|山口 周 著

「操作的パラダイム」から「創発的パラダイム」への転換

Al時代に活躍する人材「3つの能力」のうち3番目の「組織的能力」おいて、マネジメント力で共感する内容がありましたのでまとめます。

  1. 「共感協働のマネジメント」 部下やメンバーが、自発性や創造力、協調性や共感力を遺憾なく発揮し、互いに協力し合って優れた仕事を成し遂げられるようにすること
  2. 「働き甲斐のマネジメント」 部下やメンバーが、仕事に意味と意義を見出し、働き甲斐や生き甲斐を感じられるようにすること
  3. 「成長支援のマネジメント」 部下やメンバーの不満や不安、迷いや悩みに真摯に耳を傾け、その不満や不安、迷いや悩みを契機として、部下やメンバーが人間的に成長していくことを支えること

1については一昔前は軍隊のような組織で、部下やメンバーを「操作しよう」するようなマネジメントも見られましたが、「創発的マネジメント」では、部下やメンバーの自主性を大切にします。

このマネジメントスタイルでは自発的行動を支援することによって、結果として、そこに新たな技術や商品、サービスやビジネスが、自己組織的なプロセスで「創発的」に生まれてきます。

これは私も日頃意識していることです。

私自身は現在、新人のような配属されたばかりのメンバーのキャリアを支援しています。

部署での業務は一通り教えますが、部署でのやり方が井の中の蛙になっている可能性があり、改善の余地があることを伝え、部署でのキャリアが浅いメンバーからも創発的な提案が期待できるような接し方を意識しています。

2については「心のマネジメント」も重要であることが述べられています。

一昔前は部下やメンバーの「心」を、マネジャーやリーダーの都合の良い方向に変えていこうとするマネジメントも見られました。

現代では、部下やメンバーの視点に立ち、その「心」が、自然に、互いの共感力を高めたり、仕事に働き甲斐を感じたりできるように支援するマネジメントが求められます。

私も業務をメンバーに依頼する際に、メンバーがなぜそのようなことに取り組まないといけないのか、背景や意義を十分に理解してもらえるように努めています。

昔は、自分で考えろとか、ルールで決まっているのだから黙って従えというのがよくありました。

現在「カウンセリング」や「コーチング」はそれぞれの専門の職業が存在しています。

3について、これからの時代、マネジャーやリーダーは、これらを外部の専門職に任せるだけでなく、自分自身が、その二つの力を身につけることが求められるようになっていくと述べられています。

これからの時代にリーダーになる人は、人間でないといけないマネジメントスキルの一つになりますので、学ぶ価値があるのではないかと感じました。

実践・実行力

最後は、所感的なまとめになりますが、マネージャーだろうとマネージャーでなかろうと、自ら行動し、実践・実行できる人材がこれから求められるのではないかと感じました。

本書では「アイデア実現力」という言葉がありました。

会社組織の中でも、ご意見番やアイデアを発案するだけの人は結構います。

しかし、自らリスクを負って本気で動き、当事者的に実行しようとする人は意外に多くありません。

優れたアイデアを発案するだけでなく、そのアイデアの実現を妨げるような目の前の現実(上司の判断、仲間の意識、職場の文化、会社の方針、技術的な問題、 資金的な制約、制度的な壁、市場の現状、社会の仕組みなど)を変えていくことのできる「現実変革力」が求められます。

またマネジメントをする際も、実際に実行するのは部下ということで、Go No goの意思決定さえしておけばいいという考えのリーダーもいるかもしれません。

これからの時代はマネジャーやリーダー自身が、職場において、自発性と創造力、協調性と共感力を発揮していくことが重要です。

私自身の経験を振り返ると、そのようなリーダーの下の方が、感化され、働きがいを感じながら仕事ができました。

メンバーが仕事に意味や意義を見出し、働き甲斐や生き甲斐を感じることにもつながるでしょう。

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