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KLA Corporation(KLAC)について
KLAは、1997年4月にKLA Instruments CorporationとTencor Instrumentsが合併し、KLA-Tencorとして設立されました。
KLA Instruments CorporationとTencor Instrumentsはそれぞれ1975年と1976年に事業を開始した半導体製造装置業界の老舗企業です。
KLAは4つの事業セグメントに分けられます。
- 半導体プロセス制御
- 特殊半導体プロセス
- PCB・ディスプレイ・部品検査
- その他事業

半導体のプロセス制御事業
KLAは事業構成の大半を占めている半導体のプロセス制御装置市場において、2004年以降シェアを伸ばしており、直近で50%以上を占めています。
プロセス制御装置の市場とは、シリコンウエハーを加工して半導体回路を形成するのに必要な前工程装置(WFE)の市場です。
直近2022年のKLAの市場シェアは競合他社の4倍以上と圧倒的です。
WFE市場は過去から順調に伸びてきており、2022年には50億ドル以上の急成長を遂げています。
WFE市場の中でも、プロセス制御装置の市場は2022年で最も急速に成長しており、1年間で30%増の135億ドルに達したとされています。

半導体の受給にはサイクルがありますので、以下の世界半導体市場統計(WSTS)を参考にしてください。
半導体の製造工程は複雑で、各工程で様々な半導体製造装置メーカーが関わっています。
semiでは半導体業界MAPで、各工程の主要装置メーカーをわかりやすくまとめています。
KLAは前工程のウェーハ検査のところで登場します。



KLAはウェーハに加えて、レチクル、集積回路(IC)、パッケージング、プリント回路基板(PCB)、フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造のための高度なプロセス制御とソリューションを提供しています。
中国リスクについて
以下はmoomoo証券で参照できる地域別売上高になります。地域別売上高を見ると、中国が最も大きな割合を占めています。

カントリーリスクについてはAnnual Reportに次にように述べられています。
現在、中国は半導体製造装置セクターにとって重要な長期成長地域と考えられています。
一方で、米国商務省は中国を拠点とする特定の事業者を貿易取引制限リスト(U.S. Entity List)に追加しています。
米国商務省は、KLAが当該事業体に製品およびサービスを無許可で提供することを制限しています。
軍事的な最終用途として従事する中国の顧客に対して輸出許可要件を課しています。
これまでの規制はKLAの事業に大きな影響を与えませんでしたが、今後、米国政府や他の国による新たな規制により、KLAの製品やサービスに供給制約がかかる可能性があります。
株価
KLAの現在の株価は以下のようになっています。
損益計算書(P/L)
以下は、KLAの損益計算書です。

研究開発比率は10%を超えていますが、必要な新製品や機能強化製品をタイムリーに出して競争力を維持するために、製品の研究開発に多額の投資を行っています。
過去の推移を見ても、売上高研究開発比率は常に10%を超えてきています。

売上高・営業利益・営業利益率・純利益
以下は、売上高・営業利益・営業利益率・純利益の推移です。
売上高が右肩上がりで、営業利益率も非常に高い水準です。
株主還元
KLAは配当や自社株買いによる株主還元も積極的に行っています。
2006年以降の増配率は~15%となっており、13年連続で増配をしています。

以下は、KLAのフリーキャッシュフローの推移を折れ線グラフで示しており、配当と自社株買いを積上げ縦棒グラフで示しています。
毎年連続増配するためにはキャッシュが必要になりますので、フリーキャッシュフローと配当金の推移をまとめています。
本業で得た資金から設備投資などの支出を差し引いた自由に使えるお金(フリーキャッシュフロー)と比較すると自社株買いによる株主還元を積極的に行っていることが分かります。
Form 10-K(Dividends paid, Repurchase of class A common stock), Yahoo Finance(FCF)より作成
EPS・DPS・配当性向
EPS(一株利益)、DPS(一株配当)、配当性向は以下になります。
ROA(総資産利益率)ROE(自己資本利益率)ROIC(投下資本利益率)
以下は、ROA、ROE、ROICでLINの収益性を折れ線グラフで示しています。
- ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本
- ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産
- ROIC(%)= 税引後営業利益 ÷ 投下資本(有利子負債 + 株主資本)
Morningstar(ValuationのKey Statistics)より作成
一般的に、自社株買いを積極的に行っている企業の場合、純資産が減り自己資本比率が低下するのでROEが高くなります。
また、配当による株主還元を積極的に行っている企業は現金(内部留保)を減らすことになり、財務レバレッジが向上するので、ROEが高くなります。
財務レバレッジ=総資産/自己資本ですので、ROA(%) = 当期純利益/総資産に財務レバレッジをかけ合わせると、当期純利益/総資産 × 総資産/自己資本= 当期純利益/自己資本 = ROEとなります。
つまりROEはROA × 財務レバレッジということになります。
米国企業はROEは12%、ROAは6%程度と言われています。
LINの収益性は標準的と言えます。
ROICは投下資本からどれだけ税引後営業利益を生み出したかを見ています。
営業利益から法人税を差し引く税引後営業利益(NOPAT)を使うことで、より債権者と株主に帰属する利益をどれだけ効率よく生み出しているかを見ることができます。
債権者に対して支払う負債コストは主に金利です。
株主資本コストは、配当やキャピタルゲインの期待要求利回りです。
政策金利が上がると有利子負債のコストが高くなります。
債権の金利が高くなると、株式の投資妙味を確保するために株主が企業に対して求める投資リターンの水準も高くなります。
この負債コストと株主資本コストを加重平均した資金調達コストがWACCで、企業はWACC以上の利回り、すなわちROICを目指す必要があります。

米国企業のROICは10%程度が平均で、日本企業は6%程度になります。
尚、ROICは株主と債権者両方の視点が入っていますが、先程のROEは当期純利益を純資産(自己資本)で割ったもので、株主視点の指標であると言えます。
一方、ROAは当期純利益を総資産で割ったものですので、全社的視点の指標であると言えます。

キャッシュフロー(CF)
以下はKLAのキャッシュの推移を表しています。
2019年を除けばFCF(営業CF-投資CF)はプラスであり、毎年キャッシュが積み上がっていることがわかります。
KLAのCFマトリクスを紹介します。
キャッシュフロー計算書を元に2017年~2022年の6年間の営業CFと投資CFデータからCFマトリクスを作成しました。
CFの推移をCFマトリクスで確認することで企業の成熟段階を分析することができます。
以下がその結果です。

CFマトリクスの見方
- 投資期→安定期→停滞期→低迷期→後退期→破綻期と円を描くような矢印が示されていますが、これは企業の一般的なライフサイクルを示しています。
- 横軸に営業CF、縦軸に投資CFをとっています。
- 営業CFがマイナスの場合、ビジネスをすることで損失を出している状態で、プラスの場合はビジネスでキャッシュを得ている状態を指します。
- 投資CFがマイナスの場合、事業投資をしている状態で、プラスの場合は資産を売却してキャッシュを得ている状態を指します。
- 点線が営業CF=投資CFのラインになります。
- CFマトリクス上で点線よりも上に位置している場合、企業のキャッシュは増えていることを示します。
安定期の場合
事業投資も行っているが、ビジネスで儲けた金額の方が大きいことによってキャッシュが増えています。
停滞期の場合
ビジネスでの儲けに加え、資産を売却することでキャッシュが増えています。
低迷期の場合
ビジネスの儲けは損失が出ている状態です。しかし、資産の売却額が本業の損失額よりも大きいため、キャッシュは増えている状態です。
LINの場合、分析期間において、ビジネスでの儲けによりキャッシュが増えていることが分かります。
2017年以降は毎年CFを着実に増やしていることが分かります。
【参考】