配当貴族の連続増配株|老舗のブランド力で競合を寄せ付けないS&P グローバルの銘柄分析

配当貴族銘柄のS&P グローバル(SPGI)

今回はS&P グローバル(以下、SPGI)の銘柄分析を紹介します。

SPGIは信用格付け事業(レーティング事業)、財務データや分析ツールの提供を行うマーケットインテリジェンス事業、商品やエネルギー価格などを提供するプラッツ事業、 株価指数などの各種インデックスを算出するインデックス事業を手掛ける金融情報大手です。

売上高の半分近くを信用格付け事業が占めています。

政府や企業などの債権発行体の信用状態を第三者の格付会社の立場として評価して、手数料を受け取るビジネスモデルです。

格付け機関は債権発行後も信用格付けの監視を行い、債権残存期間も債権発行体から支払いを受ける仕組みになっています。

2021 Investor Fact Book

収益のタイプとしてサブスクリプション(リアルタイムのニュースやマーケットデータのサブスクリプション収益)、非サブスクリプション/トランザクション(カンファレンスのスポンサー、コンサルティング契約、債券格付け、銀行融資の格付け、企業信用推定などの手数料)、非トランザクション(信用格付けの監視、 年会費など)、資産連動費用(ETFや投資信託の資産価値に基づくロイヤリティ収入)、販売量に応じたロイヤリティ (取引量に応じたライセンス料)に分けられます。

以下は moomoo証券で参照できる事業の構成比になります。

WEBブラウザの場合は こちらからmoomoo証券の公式サイトにアクセスできます。

売上高を収益タイプ別に見るとサブスクリプション収益が半分以上を占めるのが特徴的です。

以下は moomoo証券で参照できる地域別売上高になります。

WEBブラウザの場合は こちらからmoomoo証券の公式サイトにアクセスできます。

地域別の売上高で見ると米国が6割合、欧州も2割以上を占めています。

SPGIは45年以上連続増配をしている配当貴族銘柄でもあります。

配当王・配当貴族銘柄については以下の記事を参考にしてください。

配当王・配当貴族が連続増配を実現している配当利回り【2023年5月】

老舗のブランド力が信用格付け事業の高い参入障壁

世界における債権の格付けは3大格付け会社(SPGI、ムーディーズ、フィッチ)が95%以上を占めており、寡占状態です。

新興企業が格付け事業に新規参入をしたとしても、3大格付け会社の牙城を崩すことは容易ではないでしょう。

債権発行体側からしても、実績と信頼、ブランド力を有する大手格付け会社の格付けを取得しないことは、より高い金利や資金調達コストを支払うことになる可能性があるからです。

したがって、格付け事業は特に実績と信頼を有する老舗のブランド力が重視される事業と言え、高い参入障壁があります。

需要が高い米国の代表的なS&P500インデックスの商標使用料

SPGI以外にもインデックス事業を手掛けている企業として以下があります。

  • MSCI:オルカンと呼ばれる全世界株インデックスなどを算出
  • FTSE Russel:米国籍ETFであるVTが連動を目指すFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスなどを算出

これらに対して、SPGIは最も汎用されている伝統的なインデックスと言っていいS&P500インデックスやDow Jonesを算出しています。

海外ETFでも時価総額ランキンを並べると、S&P500インデックスに連動したETFが常に上位に来ています。

ファンドは対象指数の商標使用料として純資産額に対して0.03%~0.05%程支払われるケースが多いです。

投資の大衆化やETFや投資信託などインデックスに対する需要が高まれば高まる程、資産連動収入が増加が期待されます。

株価

SPGIの現在の株価は以下のようになっています。

財務情報分析

ここからは財務情報分析を紹介します。

簿記や会計、国際会計基準のIFERSを無料で学びたい場合はCPAラーニングがおすすめです。

貸借対照表(B/S)

以下は、SPGIのバランスシートです。

シカゴ・マーカンタイル取引所グループ(CME Group)とのジョイントベンチャーであるS&P Dow Jones Indices LLCの株主資本が償還可能非支配株持分として含まれています。

2022年 Annual Reportより作成

純資産額が去年の21億ドルから大幅に増えていますが、IHSマークイット社の買収に伴う資本剰余金が43.4億ドル積み上がったことが大きく関係しています。

コーポレート・ニュース – Mar 01, 2022

損益計算書(P/L)

以下は、SPGIの損益計算書です。

直近の営業利益には処分益が含まれています。

この処分益にはLeveraged Commentary and Data(LCD)の売却収益5.05億ドル(税引後3.78億ドル)やCUSIP Global Services(CGS)の売却収益13.42億ドル(税引後10.05億ドル)が含まれています。

Leveraged Commentary and Data(LCD)はレバレッジド・ファイナンス市場のニュース、調査、データ、洞察、指数で市場をリードしていました。

CUSIP Global Services(CGS)はSPGI傘下で株式などの銘柄にCUSIPなどの証券コードを付番しています。

SPGIは390億ドル規模にもなるIHSマーケットクイット買収で規制当局の承認を得るために、CUSIP Global Services(CGS)の売却に動いたとされています。

売上高・営業利益・営業利益率・純利益

以下は、売上高、営業利益、営業利益率、純利益になります。

以下は処分益を含めない営業利益の推移となっていますが、処分益も含めた営業利益は直近も増益となりました。

Google Chart Tools サンプル

2014年に営業利益と純利益が大きく減少しています。

これは2000年代後半に起きたサブプライム問題が関係しています。

SPGIのような格付け会社は、サブプライム※の客層向けのMBS(住宅ローン担保証券)について、格付けを行い、証券会社を相手に商売していました。

※プライム(優良客)層の下位にあたる層

しかし、この格付が手数料を得るための不当に高いものだったとして、米司法省に提訴されています。

後にこれら証券化商品の多くがデフォルトに陥り、2008年のリーマンショックの引き金になりました。

2014年はその和解金として約$16億ドルを支払った影響で営業利益と純利益を大きく減少させています。

株主還元

フリーキャッシュフローは順調に伸びている上、自社株買いと配当による積極的な株主還元が行われていることが分かります。

変動幅が大きい当期純利益では還元状況がつかみにくいため、企業によっては分母を純資産としたDOE(株主資本配当率)を還元目標としている場合もあります。

そこで、純資産と配当金の推移もまとめています。

前述の通り、IHSマークイット社の買収に伴う資本剰余金で2022年は純資産額が大幅に増え、大きな自社株買いも行われました。

純資産以上の自社株買いと配当を行っていることもあり、株主還元に積極的であることが分かりますが、キャッシュの総出力が高い企業ですので問題ないでしょう。

Google Chart Tools サンプル

2021 S&P GLOBAL INVESTOR FACT BOOKより作成

2021年はIHS マークイットと合併したため、自社株買いを行っていません。

合併は2022年2月28日に完了いました。

参照:S&P Global Completes Merger with IHS Markit, Creating a Global Leader to Power the Markets of the Future

EPS・DPS・配当性向

以下の配当性向を見てもまだまだ増配余地が残されていることが分かります。

Google Chart Tools サンプル

ROA(総資産利益率)とROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)

以下は、ROA、ROE、ROICでSPGIの収益性を折れ線グラフで示しています。

  • ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本
  • ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産
  • ROIC(%)= 税引後営業利益 ÷ 投下資本(有利子負債 + 株主資本)

Morningstar(ValuationのKey Statistics)より作成

一般的に、自社株買いを積極的に行っている企業の場合、純資産が減り自己資本比率が低下するのでROEが高くなります。

また、配当による株主還元を積極的に行っている企業は現金(内部留保)を減らすことになり、財務レバレッジが向上するので、ROEが高くなります。

財務レバレッジ=総資産/自己資本ですので、ROA(%) = 当期純利益/総資産に財務レバレッジをかけ合わせると、当期純利益/総資産 × 総資産/自己資本= 当期純利益/自己資本 = ROEとなります。

つまりROEはROA × 財務レバレッジということになります。

米国企業はROEは12%、ROAは6%程度と言われています。

直近では前述の通り、IHSマークイット社の買収に伴う資本剰余金で純資産が膨らみましたので、ROEが大幅に減少しました。

SPGIのROAを見るとここ数年は20%前後で推移しています。

SPGIの収益性はかなり高いと言えます。

ROICは投下資本からどれだけ税引後営業利益を生み出したかを見ています。

ROICは、営業利益から法人税を差し引く税引後営業利益(NOPAT)を使うことで、債権者と株主に帰属する利益をどれだけ効率よく生み出しているかを見ることができます。

債権者に対して支払う負債コストは主に金利です。

株主資本コストは、配当やキャピタルゲインの期待要求利回りです。

政策金利が上がると有利子負債のコストが高くなります。

債権の金利が高くなると、株式の投資妙味を確保するために株主が企業に対して求める投資リターンの水準も高くなります。

この負債コストと株主資本コストを加重平均した資金調達コストがWACCで、企業はWACC以上の利回り、すなわちROICを目指す必要があります。

米国企業のROICは10%程度が平均で、日本企業は6%程度になりますので、投資効率はかなり高く、また上昇傾向であることがわかります。

尚、ROICは株主と債権者両方の視点が入っていますが、先程のROEは当期純利益を純資産(自己資本)で割ったもので、株主視点の指標であると言えます。

一方、ROAは当期純利益を総資産で割ったものですので、全社的視点の指標であると言えます。

キャッシュフローマトリクス

以下はSPGIのキャッシュの推移を表しています。

FCF(営業CF-投資CF)は毎年プラスであり、キャッシュが積み上がっていることがわかります。

前述の通り、IHSマークイット社の買収に伴い純資産額が大幅に増え、2022年は例年よりも大きな自社株買いを行いました。

2022年は投資CFとして大きなキャッシュのマイナスが発生しています。

Google Chart Tools サンプル

SPGIのCFマトリクスを紹介します。

今回キャッシュフロー計算書を元に2016年~2022年の7年間の営業CFと投資CFデータからCFマトリクスを作成しました。

CFの推移をCFマトリクスで確認することで企業の成熟段階を分析することができます。

以下がその結果です。

CFマトリクスの見方

  • 投資期→安定期→停滞期→低迷期→後退期→破綻期と円を描くような矢印が示されていますが、これは企業の一般的なライフサイクルを示しています。
  • 横軸に営業CF、縦軸に投資CFをとっています。
  • 営業CFがマイナスの場合、ビジネスをすることで損失を出している状態で、プラスの場合はビジネスでキャッシュを得ている状態を指します。
  • 投資CFがマイナスの場合、事業投資をしている状態で、プラスの場合は資産を売却してキャッシュを得ている状態を指します。
  • 点線が営業CF=投資CFのラインになります。
  • CFマトリクス上で点線よりも上に位置している場合、企業のキャッシュは増えていることを示します。

安定期の場合
事業投資も行っているが、ビジネスで儲けた金額の方が大きいことによってキャッシュが増えています。

停滞期の場合
ビジネスでの儲けに加え、資産を売却することでキャッシュが増えています。

低迷期の場合
ビジネスの儲けは損失が出ている状態です。しかし、資産の売却額が本業の損失額よりも大きいため、キャッシュは増えている状態です。

2016年の1年間は投資CFが約25億ドルになり、CFマトリクス上、停滞期に位置しています。

これは2016年に市場調査・コンサルティング会社のJ.D.Powerを約11億ドルで売却してキャッシュが増加したことが主な理由になります。

SPGIの場合、分析期間の5年はビジネスでの儲けによりキャッシュを得ていることが分かります。

SPGIは連続増配株ですが、CFマトリクスの分析からも毎年CFを着実に増やしており、今後の増配も期待でき、長期保有をする上でも安心感があるではないかと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA