リーマンショック下でも安定分配、インフレに強い|米公益セクターETF:XLU vs VPU比較

米国の公益セクターETF:XLU vs VPUのどちらがおすすめか

今回は米国の公益セクターETF:XLU vs VPUについてどちらがおすすめなのか解説します。

結論を記載しますと、以下の項目別に「◯」がついている方がおすすめのETFになります。

少しマニアックな視点も含まれていますが、皆さんがETFを選ぶ上でどの項目を重視するかで選べばよいでしょう。

TickerVPUXLU
単価が安い
大型株重視
(S&P500銘柄であること)
小型株を含めたい
純資産総額
設定から歴史が長い
値上がり重視わずかに◯
分配利回りわずかに◯
分配金の成長
連続増配
配当王・配当貴族
銘柄を広く網羅

配当王+配当貴族
配当貴族(S&P500)は◯
S&P500銘柄ではない配当王は対象外
配当王・配当貴族
銘柄が構成比に
占める割合が高い
わずかに◯
S&P500銘柄ではない配当王は対象外
低い経費率
分散
(構成銘柄数が多い)

正直、総合評価では甲乙つけ難く、どちらを選んでも大差はないでしょう。

高配当で長期的に増配が期待できる米国の公益セクターETF

ちなみに、筆者はVPUを選びました。

あえて理由を挙げるならば後ほど比較を紹介しますが、VPUの方がわずかに株価の成長率と増配率が高いこと、さらにVPUの方が組入銘柄が多く、配当貴族と配当王の両方が含まれていることです。

しかし、分散という観点においてはXLUと重複するS&P500銘柄がVPUの構成割合のほとんどを占めていることから、組入銘柄が増えたところで分散効果は限定的で、XLUとほぼ値動きは変わりません。

また、XLUはS&P500銘柄の配当貴族が含まれますが、VPUは配当貴族銘柄に加えS&P500組入銘柄に限定しない配当王も含みます。

ただしこちらも2点の理由から、XLUと比較して特筆すべき違いではないと考えています。

1点目はS&P500組入銘柄以外の配当王は配当貴族銘柄に比べて時価総額が小さく、VPUに占める割合も限定的ですので、株価や増配の恩恵は微々たるものです。

2点目としてはXLUの方は組入銘柄数が少ない分、配当貴族銘柄が構成比率に占める割合はVPUよりもわずかに大きくなります。したがって、配当貴族銘柄の増配や積極的な株主還元の恩恵を受けられるのはむしろXLUということになります。

後ほど紹介する連続増配株が構成比率に占める割合がXLUの方が大きく、よくも悪くもVPUと比較して株価や分配金の推移が連続増配株の影響を受けることになります。

筆者は配当王や配当貴族に指定されている連続増配銘柄を個別株として長期保有しています。

配当貴族銘柄一覧については以下の記事でまとめていますので興味のある方は参考にしてください。

配当王・配当貴族が連続増配を実現している配当利回り【2023年12月】

何れにせよ公益セクターはS&P500に限定するのか、S&P500以外も投資対象とすべきなのかについては他のセクターと比較すると僅かな違いなので、どちらを選んでも問題ないでしょう。

そもそも米国の公益セクターETFに投資をした背景として、ポートフォリオの配当利回りを少しでも上げ、増配も期待できる銘柄であることを重視していたからです。

米国の公益セクターETFは比較的高い分配利回りと長期的な増配を、銘柄分散しながら実現できるという魅力があります。

筆者は個別株に比べて低リスクな増配株として投資をしています。

公益セクターは有事やインフレに強い投資対象

ロシアのウクライナ進行などで最近感じたのは、公益セクターは有事でも底堅いということです。

XLUは主に米国国内の公益事業を行う会社が投資対象になりますので、グローバル企業を多く含んだETFと比較して、グローバルな成長を取り込めない反面、他国の有事のカントリーリスクを避けることができます。

公益セクターの構成銘柄には電力会社が多く、有事などによる原油や天然ガスなど資源価格の値上がりを比較的価格転嫁しやすいセクターでもあります。

値上がりをしても、電気や水道を止めるわけにはいきません。

そのため、インフレ下でも比較的底堅い値動きをしています。

実際に米国においてインフレが急速に進んだ1970年代(1973年末~1981年末)はエネルギー価格も上昇し原油価格も上昇したことから、エネルギーセクターのリターンが14.2%と最も高い結果となりました。

一方でリスクも23.3%と最も高い結果になっています。

通信のリスク-リターンは12.4%-12.3%、公益のリスク-リターンは10.9%-16.1%とリスク調整後のリターンはエネルギーの0.61と比較して、通信は1.01、公益は0.68と全セクターの中で最も高い結果でした。

インフレの時代は比較的値上げをしやすいセクターが安定的かつ効率的にリターンを稼げることを示しています。

また、デフレ下では最適解とされたインデックス投資もインフレ負けすることもあるということを頭の片隅に入れておくべきでしょう。

非常に興味深い内容になっていますので、グラフ等詳細は以下の東京海上アセットマネジメント公式チャンネルをご確認ください。

時間のない方は10分地点まで早送りして再生することをおすすめします。

また、戦争だけではなく脱炭素や環境対策の動きは今後も世界的に強まるのではないかと考えています。

温室効果ガスの排出量が比較的多い石油会社は環境意識が高い株主の目もあって、原油を増産し続けることが難しい事業環境が続くのではないかという仮説を立てています。

資源価格の高止まりと、その価格転嫁がエネルギーセクターや公益セクターに追い風になります。

米国の公益セクターETF:XLU vs VPUの比較

以下がXLUとVPUを比較した結果になります。

XLUの方が一口単価が安いので投資をしやすいかもしれません。

分配利回りは3%以上が期待できる比較的高い水準になっっています。

TickerVPUXLU
名称 バンガード 米国
公益事業セクター ETF
公益事業セレクト セクター
SPDR ファンド
基準価額
(米ドル)
137.43
(2023/12/06)
63.66
(2023/12/06)
投資対象米国の大、中、小型株の
公益事業セクター
米国の大型株(S&P500)の
公益事業セクター
純資産総額
(百万米ドル)
4,691.67
(2023/11/30)
13,812.61
(2023/11/30)
設定日2004/01/261998/12/16
分配利回り3.39%3.33 %
経費率0.10 %0.10 %
構成銘柄数65
(2023/10/31)
30
(2023/12/06)

XLUとVPUの値動き比較

以下のチャートを見てください。

赤がXLU、青がVPUを示しており、VPUの設定来の値動きを比較しています。

値動きはほぼ変わらない事がわかります。

わずかにVPUの方が株価の成長が見られるでしょうか。

ちなみに、値上がりが小さいと言われがちな米国の公益セクターETFですが、株価の成長は高配当ETF程度の実績があります

以下は高配当ETFのHDVの設定来のチャートになります。

赤がXLU、青がHDV、紫はVYMを示しています。

HDVの設定来ですと10年ちょっとでHDVよりも値上がりしていて、VYMには及ばないリターンになっています。

実際に分配利回りはHDVとVYMの間ぐらいの水準は期待できます。

XLUとVPUの構成銘柄重複

以下はXLUとVPUの構成銘柄の重複を見たものになります。

「Total」を見ると、XLUとVPUで重複している銘柄が、XLUの100%近くを占めていることが分かります。

また、2つのETFで組み入れれらている重複銘柄数を数えると、XLUの構成銘柄数と同じになりますので、VPUに投資をしておけば、XLUに組み入れられている銘柄にも投資ができることになります。

2つのETFで組み入れられている重複銘柄はVPUの8割以上の構成比率を占めています。

S&P500に組み入れられている公益事象セクターの銘柄(=XLU銘柄)のVPUに占める比重が大きいということが分かります。

XLUとVPU共に組入銘柄の中でトップのNEXTERA ENERGYが10%以上の割合を占めています。

NEXTERA ENERGYは配当貴族に指定されている連続増配株ですが、この後紹介するETFの分配金の成長率にも大きな影響を与える可能性があります。

当然、ETFの値動きに与える影響も大きいです。

XLUとVPUの配当王・配当貴族構成比率

XLUとVPUについて、長期に渡り毎年連続増配実績がある配当王または配当貴族銘柄がそれぞれのETFの構成比率に占める割合を比較しました。

Ticker企業名分類VPUに占める
割合(%)
XLUに占める
割合(%)
NEENEXTERA ENERGY GROUP配当貴族11.412.6
EDCONSOLIDATED EDISON INC配当貴族3.13.4
ATOATMOS ENERGY CORP配当貴族1.61.8
BKHBLACK HILLS CORP配当王0.3 
AWRAMERICAN STATES WATER CO配当王0.3 
CWTCALIFORNIA WATER SERVICE GRP配当王0.3 
SJWSJW CORP配当王0.2 
CDUAFCANADIAN UTILITIES LTD.配当王  
NWNNORTHWEST NATURAL GAS CO配当王0.1 
MSEXMIDDLESEX WATER CO配当王0.1 
配当王・配当貴族構成比率17.417.8

VPUは公益事業セクターの配当王・配当貴族銘柄の全てをカバーしています。

VPUは公益事業セクターの配当王銘柄を含んではいるものの、配当貴族銘柄と比較すると構成比率に占める割合はかなり小さく、影響は限定的となっています。

XLUはS&P500縛りがありますので、配当王銘柄は含まれていません。

XLUは構成銘柄が少ない分、1銘柄の構成比率が大きくなっています。

そのために配当貴族または配当王が構成比率に占める割合はXLUがVPUよりも大きくなっています

配当王・配当貴族の定義については以下の記事でまとめていますので興味のある方は参考にしてください。

連続増配年数などの情報も配当貴族銘柄一覧で定期的に更新しています。

配当王・配当貴族が連続増配を実現している配当利回り【2023年12月】

上の記事では、 米国の配当王・配当貴族銘柄一覧を紹介していますが、以下の米国会社四季報(東洋経済)でも特集で連続増配年数トップ50の企業とその連続増配年数が紹介されています。

もちろん会社四季報ですので、連続増配の特集だけではなく、個別企業の業績・財務情報から日本で売買可能な主要な米国ETFまで、投資家のバイブルになるような情報が豊富に詰め込まれています。

会社四季報ということで分厚い本になりますので、筆者のおすすめは電子書籍です。

XLUとVPUの分配金の成長

公益事業銘柄は電気や水道などの生活インフラを担うセクターですので株式のなかでも景気動向で業績が大きくぶれず、キャッシュフローが安定しているという特徴があります。

「他業種よりも債券代替の色彩が強い」(フィデリティ投信の重見吉徳マクロストラテジスト)とも言われています。

以下はXLUとVPUの分配金の推移を示しています。

公益事業セレクト セクターSPDR ファンド(XLU)

連続増配年数10年
5年分配金CAGR3.98%

バンガード 米国公益事業セクター ETF(VPU)

連続増配年数1年
5年分配金CAGR4.72%

XLUは連続増配記録を更新中、VPUは2016年に2015年からの増配はなしで維持、2021年は減配しています。

しかし、XLUとVPU共に長期的には増配傾向であることが分かります。

リーマンショックで減配しなかった公益セクターETF

以下はXLUとVPUの分配金の推移を示しています。

今回、比較対象としてS&P500に連動するSPYと高配当ETFのVYMも入れました。

VYMのCY合計分配金が確認できる2007年以降の分配金の水準を比較します。

2007年のCYの合計分配金を100%とした時の年別のCY合計分配金がどのように成長したかを示しています。

直近15年間では、VYM>SPY>VPU>XLUの順番で分配金の水準が高くなっていることが分かります。

分配金の成長を重視するなら、VYMの方が優れているでしょう。

VPUは減配する年もありましたが、2007年の分配金を100%とした時の直近2021年の分配金水準はXLUよりも高い水準にまで成長していることが分かります。

特筆すべきは、SPYとVYMはリーマンショックがあった2008年から2009年にかけては年間の分配金が減少しました。

一方で、公益セクターETFはリーマンショックの年でも分配金水準を維持していました。

まとめ

以上をまとめると、米国の公益セクターETF:XLU vs VPUのどちらを選択するのかについて迷った方は、以下の項目でどれを重視するかで選ぶと良いでしょう。

分配金に注目すると、XLUはS&P500銘柄を投資対象としており、大型株であることから、小型株を含むVPUと比較すると若干高配当で増配が安定的な特徴があります。

小型株を含むVPUは若干利回りが下がり、増配ペースにばらつきがありますが、増配率や値上がり率は若干XLUよりも高くなっています。

広く分散をしているVPUでも大型株であるS&P500銘柄の占める構成比率が圧倒的に大きいですので、VPUとXLUの違いは微々たるものとなっています。

総合評価ではどちらを選んでも大差はないので、好みで選ぶと良いでしょう。

重視項目VPUXLU
単価が安い
大型株重視
(S&P500銘柄であること)
小型株を含めたい
純資産総額
設定から歴史が長い
値上がり重視わずかに◯
分配利回りわずかに◯
分配金の成長
連続増配
配当王・配当貴族
銘柄を広く網羅
配当王・配当貴族
銘柄が構成比に
占める割合が高い
低い経費率
分散
(構成銘柄数が多い)

今回の内容が参考になれば幸いです。

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