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コカ・コーラ (KO)
KOはCoca-ColaやSprite、Fantaなどの炭酸飲料が売上の過半を占めている飲料メーカーです。
ノンアルコール飲料では世界最大手です。
500以上のブランドと4700以上の製品を展開しています。

地域別で見るとやはり北米が大きな割合を占めてはいますが、他の地域にも結構分散されていることがわかります。
地域で分けられていないBottling InvestmentsやGlobal Venturesという事業セグメントが分けられています。
ボトリング事業
KOは2014年に製造、物流、販売をボトリング事業としてフランチャイズ化しています。
KOは、認定されたボトリングパートナーに濃縮物とシロップを販売し、このボトリングパートナーは食料品店、レストラン、露天、コンビニエンス ストア、映画館、遊園地などの顧客と緊密に連携してローカライズされた戦略を実行します。
このボトリングパートナーが事業を引き継いで世界各地で事業を展開させるのにBottling Investments事業を行っています。
事業環境として人件費、アルミ価格、輸送費などの高騰に直面した場合、フランチャイズ側のボトリングパートナーが負担することになります。
これにより、KO本体はブランド戦略や新製品開発など主要な事業に集中することができます。
Global Ventures事業
Global Ventures事業では世界展開できそうな他の飲料ブランドの買収や出資を行っています。
Global Ventures にはコスタコーヒー、モンスタービバレッジ、イノセントジュース&スムージー、ドガダンティーが含まれます。
Global Ventures の収益の大部分はコスタコーヒーで構成されており、次に大きな収益をあげているイノセントと合わせると、Global Venturesの総収益の約90%になります。

成長機会
KOは歴史も長く、安定的に配当を出しているバリュー株なので、今後は大きな成長は期待できないのではないかと考えている人も少なくないかもしれません。
KOは広くグローバル展開をしている企業ですが、下の右側の図を見てわかる通り、世界にはTCCC(The Coca-Cola Company)の商品にアクセスできていない人口(グレーの人形)が大半を占めています。
また、2030年には世界の人口が増え(緑の人形)、成長機会がさらに増えると見ています。
下の図の左側を見ると、世界人口の80%を占める開発途上国と新興国の市場にまだまだ開拓の余地が残されていることがわかります。

投資リスク
KOはレストランや劇場、スタジアムでの売上比率が高いため、新型コロナウイルスの影響を受けました。
現在は回復基調にありますが、今後も新型コロナの感染再拡大により業績に影響を与えるリスクがあります。
業績
貸借対照表(B/S)
以下は、KOのバランスシートです。
流動資産が流動負債を上回っているので短期負債の資金ぶりが問題になることはなさそうです。
KOは株主から集めたお金を使ってしっかりと利益があげられています。
自社株買いを通じた株主還元も実施していることがわかります。
自己株式 | $-51,641M |
利益剰余金 | $69,094M |
純資産合計 | $22,999M |
Form 10-Kより作成
損益計算書(P/L)
以下は、KOの損益計算書です。
2021年 Annual Reportより作成
売上高に占める原価率は40%、販管費は31%、営業利益率は27%と高い収益性を誇っています。
売上高・営業利益・営業利益率・純利益
営業利益率は20%以上の年が殆どで、稼ぐ力が強いことが分かります。
売上高は減少傾向です。
ボトラー※の株式の売却を進めているからです。
※清涼飲料水の原液を仕入れ、水で薄めて最終製品としてボトルに入れて出荷する会社
営業・純利益の推移を見ると安定した推移をしていることが分かります。
営業利益率の推移を見ると近年は収益性を高めていることがわかります。
ボトリング事業のフランチャイズ化を進め、利益率を高くする戦略を取っています。
2017年は純利益が大幅に減っていますが、税制改革に伴い一時的な費用を計上したため、利益を打ち消しました。
株主還元
以下は、KOのフリーキャッシュフローの推移を折れ線グラフで示しており、配当と自社株買いを積上げ縦棒グラフで示しています。
毎年連続増配するためにはキャッシュが必要になりますので、フリーキャッシュフローと配当金の推移をまとめています。
本業で得た資金から設備投資などの支出を差し引いた自由に使えるお金(フリーキャッシュフロー)以上に、配当と自社株買いで株主還元を行っている年が多かったことが分かります。
Form 10-K(Dividends, Purchases of stock for treasury), Yahoo Finance(FCF)より作成
ここ数年は自社株買いが減少傾向です。
KOは50年以上連続増配を更新中の配当王かつ配当貴族銘柄でもあります。
配当王・配当貴族銘柄については以下の記事を参考にしてください。

連続増配株ですので配当による株主還元を重視しつつ、業績に応じて自社株買いをするものと思われます。
連続増配実績だけではなく、プロが選んだ買って持っておくだけの優良長期保有米国株についてはROA(総資産利益率)とROE(自己資本利益率)
以下は、ROAとROEでKOの収益性を折れ線グラフで示しています。
Morningstar(ValuationのKey Statistics)より作成
- ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本
- ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産
自社株買いを積極的に行っている企業の場合、純資産が減り自己資本比率が低下するのでROEが高くなります。
また、配当による株主還元を積極的に行っている企業は現金(内部留保)を減らすことになり、財務レバレッジが向上するので、ROEが高くなります。
財務レバレッジ=総資産/自己資本ですので、ROA(%) = 当期純利益/総資産に財務レバレッジをかけ合わせると、当期純利益/総資産 × 総資産/自己資本= 当期純利益/自己資本 = ROEとなります。
つまりROEはROA × 財務レバレッジということになります。
尚、米国企業はROEは12%、ROAは6%程度と言われています。
ROAを見ると直近で11%程度で上昇傾向となっています。
KOの収益性は高いと言えます。
2017年のROE、ROAの減少は税制改革に伴い一時的な費用を計上したため、純利益を大幅に減ったことが関係しています。
ROIC(投下資本利益率)とCFROI(投下資本キャッシュフロー率)
貸借対照表の有利子負債と株主資本を合わせた投下資本に注目をしてみました。
投下資本はEquity Attributable to Shareowners of The Coca-Cola Company+Long-term debt+Current maturities of long-term debt+Loans and notes payableで算出
- ROIC(%)= 税引後営業利益 ÷ 投下資本(有利子負債 + 株主資本)
- CFROI(%) = 営業CF ÷ 投下資本(有利子負債 + 株主資本)
ROICは投下資本からどれだけ税引後営業利益を生み出したか、CFROIは投下資本からどれだけ営業キャッシュフローを生み出したかを見ています。
この2つは株主と債権者から調達した資金でどれだけ効率よく営業利益やキャッシュフローを生み出しているかを測るので似たような指標です。
しかしROICの方は、営業利益から法人税を差し引く税引後営業利益(NOPAT)を使うことで、より債権者と株主に帰属する利益をどれだけ効率よく生み出しているかを見ることができます。
債権者に対して支払う負債コストは主に金利です。
株主資本コストは、配当やキャピタルゲインの期待要求利回りです。
政策金利が上がると有利子負債のコストが高くなります。
債権の金利が高くなると、株式の投資妙味を確保するために株主が企業に対して求める投資リターンの水準も高くなります。
この負債コストと株主資本コストを加重平均した資金調達コストがWACCで、企業はWACC以上の利回り、すなわちROICを目指す必要があります。

ROIC(投下資本利益率)とCFROI(投下資本キャッシュフロー率)の結果です。
ROICはMorningstar(ValuationのKey Statistics)より作成
米国企業のROICは10%程度が平均で、日本企業は6%程度になりますので、投資効率は標準的であることがわかります。
2017年のROICの減少は前述の通り、税制改革に伴い費用を計上したことに起因しています。
尚、ROICは株主と債権者両方の視点が入っていますが、先程のROEは当期純利益を純資産(自己資本)で割ったもので、株主視点の指標であると言えます。
一方、ROAは当期純利益を総資産で割ったものですので、全社的視点の指標であると言えます。

EPS・DPS・配当性向
KOは毎年連続増配していますが、ここ数年の配当性向は80%を超えてきており、増配余地が限られてきています。
前年比% | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
EPS | -26.9% | 6.5% | -3.6% | -15.8% | 4.4% | -10.8% | -80.5% | 417.2% | 38.0% | -13.5% | 25.7% |
DPS | 6.8% | 8.5% | 9.8% | 8.9% | 8.2% | 6.1% | 5.7% | 5.4% | 2.6% | 2.5% | 2.4% |
キャッシュフロー(CF)マトリクス
KOのCFマトリクスを紹介します。
今回Morningstarでまとめられているキャッシュフロー計算書を元に2015年~2021年の7年間の営業CFと投資CFデータからCFマトリクスを作成しました。
CFの推移をCFマトリクスで確認することで企業の成熟段階を分析することができます。
以下がその結果です。

CFマトリクスの見方
- 投資期→安定期→停滞期→低迷期→後退期→破綻期と円を描くような矢印が示されていますが、これは企業の一般的なライフサイクルを示しています。
- 横軸に営業CF、縦軸に投資CFをとっています。
- 営業CFがマイナスの場合、ビジネスをすることで損失を出している状態で、プラスの場合はビジネスでキャッシュを得ている状態を指します。
- 投資CFがマイナスの場合、事業投資をしている状態で、プラスの場合は資産を売却してキャッシュを得ている状態を指します。
- 点線が営業CF=投資CFのラインになります。
- CFマトリクス上で点線よりも上に位置している場合、企業のキャッシュは増えていることを示します。
安定期の場合
事業投資も行っているが、ビジネスで儲けた金額の方が大きいことによってキャッシュが増えています。
停滞期の場合
ビジネスでの儲けに加え、資産を売却することでキャッシュが増えています。
低迷期の場合
ビジネスの儲けは損失が出ている状態です。しかし、資産の売却額が本業の損失額よりも大きいため、キャッシュは増えている状態です。
分析期間の7年はビジネスでの儲けが投資額を常に上回っており、毎年着実にCFを増やしていることが分かります。
2020年は新型コロナウィルスの感染拡大により、レストランやバー、スタジアムの売上が減少し、KOにとっては厳しい事業環境でした。
このようなこれまでに直面したことがない困難な年であっても、KOは事業投資額よりもビジネスでの儲け額が大きな安定期を維持していることが分かります。