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ヘルスケアセクターはS&P500よりも成長してきたセクター
ETFで銘柄を分散しつつ少しでもS&P500よりも値上がりが期待できる投資先として、どの様なETFが挙げられるでしょうか?
筆者なら例えばNASDAQ100に投資をするQQQや、セクターを絞って情報技術セクターに投資をするVGTを挙げると思います。
セクター別に見ると、過去の成績から情報技術セクターに加えてS&P500をアウトパフォームする可能性があるセクターとしてヘルスケアセクターが挙げられます。
今回はヘルスケアセクターに投資をするVHTについて紹介をします。
ヘルスケア セクター ETF:VHT vs XLV vs IXJの比較
バンガード 米国ヘルスケア セクター ETF(VHT)
バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF(VANGUARD HEALTH CARE ETF)は、MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア25/50インデックスのパフォーマンスへの連動を目指す。米国のヘルスケア・セクターの大型株、中型株、小型株に投資する。当インデックスは、米国のヘルスケア・セクター株式銘柄で構成されている。このセクターは、ヘルスケア機器およびヘルスケア用品を製造する企業またはヘルスケア関連サービスを提供する企業、医薬品およびバイオテクノロジー製品の研究・開発・製造・マーケティングを主たる業務とする企業で構成されている。
SBI証券
VHTはヘルスケアセクター(グローバル産業分類基準(GICS)に基づく)に分類される、米国の大、中、小型株に投資します。
MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア25/50の「25/50」は、1銘柄の構成比率を25%以下に、構成比率の5%を超える銘柄の合計が50%以下になるように制限しているという意味になります。
同じヘルスケア企業に投資をする代表的なETFを比較すると以下のようになります。
以下の表は横にスクロールできます。
Ticker | VHT | XLV | IXJ |
---|---|---|---|
名称 | バンガード 米国ヘルスケア セクター ETF | ヘルスケア セレクトセクター SPDRファンド | iシェアーズ グローバル ヘルスケア ETF |
運用会社 | バンガード | ステートストリート | ブラックロック |
連動指数 | MSCI US インベスタブル・ マーケット・ ヘルスケア25/50 インデックス | S&P ヘルスケア セレクト セクター | S&P グローバル ヘルスケア セクター |
基準価額 (米ドル) | 245.32 (2023/05/10) | 132.75 (2023/05/10) | 86.39 (2023/05/10) |
投資対象 | 米国の大、中、小型株の ヘルスケアセクター | S&P500構成銘柄の ヘルスケアセクター | オーストラリア、 ベルギー、 カナダ、 デンマーク、 フランス、 ドイツ、 アイルランド、 日本、 オランダ、 スイス、 英国、 米国のヘルスケア企業 |
純資産総額 (百万米ドル) | 17,240.62 (2023/04/28) | 39,727.63 (2023/04/28) | 4,357.19 (2023/04/28) |
設定日 | 2004/01/26 | 1998/12/16 | 2001/11/13 |
分配利回り (%) | 1.36 % | 1.55 % | 1.15 % |
経費率 (%) | 0.10 % | 0.10 % | 0.40 % |
構成銘柄数 | 410 (2023/04/30) | 65 (2023/05/11) | 114 (2023/05/12) |
VHT vs XLV vs IXJ vs S&P500の値動き比較
ちなみに、筆者はVHTを選んでいます。
そもそも米国のヘルスケアセクターETFに投資をした背景として、長期的にS&P500をアウトパフォームする可能性のある投資先として、値上がりを重視していたからです。
さらにXLVとVHTを比較すると、VHTの方が値上がりしたというのが過去の実績になります。
以下がその結果になります。
以下はVHT設定来の値動きの違いを示しています。
赤がVHT、青がXLV、緑がIXJ、黄色がSPY(S&P500)になります。
ETFで銘柄を分散しつつ少しでもS&P500よりも値上がりが期待できる投資先として選択肢になることが分かります。

冒頭にXLVとVHTだけではなく、IXJとも比較しました。
確かに欧州にも魅力的なヘルスケア企業は数多く存在しますが、米国以外の企業にも分散投資をしているIXJよりも、米国のヘルスケアセクターETFの方が成績が良いというのが過去の成績になります。
また、株価の成長は米国のヘルケアセクターETFに及ばない一方で、分配利回りが米国のヘルスケアセクターETFと比較して優れているかというとそういうわけではありません。
さらに経費率も米国のヘルケアセクターETFよりも高くなっているため、投資効率の観点から今回は比較対象から外しました。
VHTとXLVの構成銘柄重複:VHTに投資をすればXLVをカバーできる
以下はVHTとXLVの構成銘柄の重複を見たものになります。
「Overlap Companyが占める構成比率合計」を見ると、VHTとXLVで重複している銘柄が、XLVの100%近くを占めていることが分かります。
また、2つのETFで組み入れれらている重複銘柄数を数えると、XLVの構成銘柄数と同じになりますので、VHTに投資をしておけば、XLVに組み入れられている銘柄にも投資ができることになります。
逆に2つのETFで組み入れられている重複銘柄はVHTの1/4にも満たない銘柄数ですが、VHTの8割以上の構成比率を占めています。
S&P500に組み入れられているヘルスケアセクターの銘柄(=XLV銘柄)のVHTに占める比重が大きいということが分かります。
まとめると以下のようなイメージです。

米国のヘルスケアセクターETF:XLV vs VHTのどちらがおすすめか
米国のヘルスケアセクターETF:XLV vs VHTについてどちらがおすすめでしょうか。
以下の項目別に「◯」がついている方がおすすめのETFになります。
以下の項目でどれを重視するかで選ぶと良いでしょう。
重視項目 | VHT | XLV |
---|---|---|
単価が安い | ◯ | |
大型株重視 (S&P500銘柄であること) | ◯ | |
小型株を含めたい | ◯ | |
純資産総額 | ◯ | |
設定から歴史が長い | ◯ | |
値上がり重視 | ◯ | |
分配利回り | ◯ | |
低い経費率 | わずかに ◯ | |
分散 (構成銘柄数が多い) | ◯ |
ヘルステックに投資をして医療×ITの著しい成長を取り込める
以下のチャートを見てください。

先程と同じ赤がVHT、黄色がSPY(S&P500)になりますが、新たに追加した紫色が筆者が注目しているIHI(iシェアーズ米国メディカルデバイスETF)になります。
iシェアーズ米国メディカルデバイスETFはダウ・ジョーンズ米国セレクト医療機器指数への連動を目指すETFです。
医療機器・用品関連銘柄に時価総額加重で投資します。
残念ながらIHIは日本のネット証券では投資することはできません。
VHTはS&P500をアウトパフォームしていましたが、IHIはそのVHTをさらに大きくアウトパフォームしています。
IHIの最新の値動きは以下を参考にしてください。
VHTの強みとしては、医薬品、バイオテクノロジー企業だけではなく、成長著しいヘルステック企業に投資できる点ではないかと考えています。
今後、医療×ITの分野はますます成長すると思います。
AIを用いた診断や手術ロボット、遠隔医療だけではなく、ウェアラブルデバイスなどが発達してきて生体情報モニタリングも容易になり、治療だけではなく、予防や病気になった後の管理にもヘルステック企業が価値を提供する世の中になるものと思われます。
以下はVHTとIHIの構成銘柄の重複を見たものになります。
「Overlap Companyが占める構成比率合計」を見ると、VHTとIHIで重複している銘柄が、IHIの100%近くを占めていることが分かります。
また、2つのETFで組み入れれらている重複銘柄数を数えると、IHIの構成銘柄数と同じになりますの1、VHTに投資をしておけば、IHIに組み入れられている銘柄にも投資ができることになります。
セクター比率
以下がVHTのセクター比率になります。
管理健康医療(Managed Health Care)はGICSのセクター分類ではHealth Maintenance Organizations(HMO)とその他のプランの運営と管理事業と定義されています。
下線部については後ほど説明します。
Managed Careの目的は米国において医療の質とアクセスを保ちながら、医療費支出を適正化することにあります。
Managed Careを行う会社は、MCO(Managed Care Organization)と呼ばれ、医療アクセスや治療内容を管理・介入したりします。
例えば、UnitedHealth GroupやAnthem、Aetna、Cigna HealthCare、Humanaなどの企業がMCOになります。
管理健康医療(Managed Health Care)の説明でHealth Maintenance Organizations(HMO)というのがありましたが、HMOプランの保険に加入している患者さんは安い保険料を支払うことで、ネットワーク内の医師や医療機関を利用することができます。
一方で、緊急時を除くすべての診療はあらかじめ決められたプライマリーケア医の元で初診を受けることが義務付けられています。
仮に保険加入者が他の病院に行く場合、プライマリーケア医の紹介状が必要になります。
患者さんの勝手な判断で他の病院に行った場合、保険が適用されません。
その他のプランとしてはPPO(Preferred Provider Organization)プランがあります。
HMOと比較すると、ネットワーク外の医師や医療機関を柔軟に利用できる分、患者さんの自己負担額は高くなるという特徴があります。
話がそれましたが、医療機器ETFのIHIのセクター比率は以下のようになっています。
VHTの中でもヘルスケア機器とライフサイエンス・ツール/サービスのセクターで重複していることがわかります。
ハイリスク・ハイリターンな個別企業のビジネスモデルでも、セクターとしては成長が期待できる
いかがでしたでしょうか。
医療×ITの分野で活躍するヘルステック企業の市場は今後ますます伸びていくと思いますし、米国は今後も人口増加が見込まれ、新興国も経済成長、さらに国によっては人口増加に伴いヘルスケア市場は大きくなることが想定されます。
一方で、ヘルスケア市場の中でも、新薬開発をする医薬品メーカーの市場を取り巻く環境は厳しくなってきています。
具体的には、新薬の候補となる化合物を見つけ出すのが難しくなってきていますので、以前のように全て自社開発というわけにはいかず、アカデミアと連携するなどオープンイノベーションや、新薬候補化合物を持つベンチャー企業の買収も行われています。
また、生活習慣病などの市場が大きな疾患の治療ニーズは満たされてきており、これらの領域では特許が切れた後発品が主流になっています。
開発領域にも変遷が見られており、現在はがん領域や希少疾患の開発に力を入れている企業が多いです。
残されたアンメットニーズを満たす薬の開発の難易度は上がり続けますし、開発費も高くなっていきます。
特に高齢化が進んだ国では、薬価を抑えることで、国の医療費を抑えようとする力が今後も働き続けることが想定されます。
VHTはハイリスク・ハイリターンな医薬品企業だけではなく、今後も大きな成長が見込まれるヘルステック企業にも分散して投資ができるETFとしておすすめです。
人類が存続する限り、健康に対するニーズがなくなることはありません。
個別企業で見れば競争が激しく、ハイリスク・ハイリターンなビジネスだったとしても、産業としては今後も成長が見込まれますので、VHTは長期保有のETFと考えています。
もし個別株で長期保有できる銘柄を探している場合、以下も参考にしてみてください。
今回の内容が参考になれば幸いです。